今回編集部が取り上げるのは、NTR教団によるスマートフォン向け恋愛アドベンチャー「NTR彼女~カノジョを好きなのは僕だけのはず~」である。DLsite上で587本の販売数を記録し、41件のレビューから4.56点という高評価を獲得した本作は、寝取られジャンルの愛好家のみならず、感情的な没入感を重視するアドベンチャーゲームファンにも響く、緻密な構造を持った作品だ。
舞台は夏休み。主人公・晴太は、幼なじみの若菜への告白を今年こそ果たすと胸に誓う。若菜もまた、晴太との夏を静かに望んでいた。この二人の間に漂う、言葉にならない距離感と淡い期待——本作の冒頭はそういった青春の空気感を丁寧に描いており、プレイヤーが晴太に自然に感情移入できるよう設計されている点が巧みである。しかし、その穏やかな予感はすぐに引き裂かれる。女子からの人気を背景に数多の恋愛関係を弄んできた先輩・陸也が、若菜に目をつけるところから物語は急激に動き出す。
本作が寝取られジャンルの中で一歩抜きん出ている理由のひとつは、三種類の視点切り替えというシステムにある。主人公・晴太の視点では、裏サイトに投稿された動画にモザイクがかかり、映っている女性が誰なのかを知らずにプレイが進む。ヒロイン・若菜の視点では、彼女自身の言葉で性的な開発の過程や、晴太への想いが変容していく内面が綴られる。そして間男・陸也の視点では、ヒロインを意図的に「堕とす」ことへの欲望と達成感が語られる。この三者の視点が同じ出来事を異なる角度から照らし合わせることで、プレイヤーは単純な傍観者ではなく、物語の構造そのものに引き込まれていく感覚を得られる。
さらに本作には、若菜の手書き日記という形式で彼女の心情変化を追える「彼女の日記」と、校内で噂される伝説の「裏サイト掲示板」という二つの副次的テキストレイヤーが用意されている。日記は若菜の一人称で記されており、彼女がいかに純朴で、晴太への想いを大切に抱えていたかが伝わってくる。それだけに、その記述が徐々に変質していく過程は、幾重にも感情的な圧を積み上げてくる。掲示板の書き込みは第三者の視点で記されており、主人公も読者も知らないところで何が起きていたのかを事後的に知る仕掛けになっている。このような情報の非対称性を意図的に設計したゲームデザインは、NTRというジャンルの持つ「知っていた/知らなかった」という感情的落差を最大限に引き出している。
Hシーンは合計17シーンに及び、処女喪失から快楽堕ちに至るまでの段階的な変化が描かれる。声優に起用された夕霧花音の演技は、若菜というキャラクターの内面の変化——困惑から慣れ、そして溺れていく様——を音として可視化しており、テキストと音声が一体となって場面の密度を高めている。おっとりとした性格でありながら豊満な体型を持つという若菜のキャラクター造形は、寝取られジャンルにおける古典的かつ有効な設計ではあるが、日記や視点切り替えといった周辺システムがその造形に厚みを与えることに成功している。
マルチエンディング方式を採用しており、プレイヤーの選択によって晴太が無事に若菜と結ばれる未来も、取り返しのつかない喪失に終わる未来も分岐する。この構造が、ゲームとしての緊張感をプレイ全体に持続させる役割を担っている。手をこまねいていれば状況は悪化し、意識的に動けば事態は変わりうる——そのシンプルかつ残酷な法則が、夏休みという限られた時間軸の中で効果的に機能している。
4.56点という評価スコアは、このジャンルにおいて相当に高い水準だ。41件という決して少なくないレビュー数がその信頼性を担保している。本誌としては、本作を単なる性的刺激の提供にとどまらず、感情的な構造設計と物語的誠実さを兼ね備えた良作として推薦する。夏の記憶と、その記憶が侵食されていく痛みを、スマートフォンの画面の中でじっくりと体験してほしい一作である。
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