【Android版】苗床クリッカー

Circle: I'm moralistRelease: 2023/11/15
★ 4.34(1,373 reviews)Sales: 15,060

今回編集部が取り上げるのは、サークル「I'm moralist」が手がけたスマートフォン向け成人向けクリッカーゲーム「苗床クリッカー」である。DLsiteにおける販売本数は1万5千本を超え、1,373件の評価から算出された平均スコアは4.34点という高水準を維持し続けている。同ジャンルの競合タイトルが乱立するなかで、これほどの数字を叩き出せる作品には、必ずそれ相応の理由がある。本誌はその核心を丁寧に解きほぐしていきたい。

本作の骨格は極めてシンプルだ。元シスターである「苗床ちゃん」をタップ(クリック)することで魔物が誕生し、その数と強さを積み重ねてゆく——という一行で説明できるゲームループが全体を貫いている。クリッカーというジャンル自体は古くから存在するが、その反復行為に成人向けの文脈を巧みに絡め、かつスマートフォンという端末に最適化した設計は、見た目のシンプルさとは裏腹に緻密な計算の産物である。片手操作を前提とした設計思想は、ゲーム体験そのものをフリクションレスに保つという哲学の表れであり、ユーザーが「ゲームをする」という行為に余計なコストを払わなくて済む構造になっている。

ゲームデザインの面でも見るべき点は多い。アイテムのアンロック、開発度の上昇、実績の解除、そして着せ替え衣装の追加と、クリッカー特有の「積み重なっていく充実感」が丁寧に実装されている。着せ替えが8種類用意されているという事実は、本作がただの刹那的な消費物ではなく、繰り返し遊ばれることを前提として設計されていることを示す。想定プレイ時間が1〜2時間とされているが、実績解除やアイテムコレクションを追求し始めると、その数字を超えて手が止まらなくなる構造であることはプレイヤーのレビューからも見て取れる。

キャストクレジットを眺めると、本作が個人制作の域を超えた分業体制で作られていることが分かる。ゲームコンセプトから始まり、フレーバーテキスト、イラスト、ゲーム開発、ディレクション、アイコン画像、ロゴデザイン、音楽と、各分野の担当者が明確に分かれている。この規模感のクレジット構成は同人ゲームとしては充実した部類に入り、制作体制の本気度がうかがえる。イラストを担当した柳原ミツキ氏のビジュアルは本作のフロントフェイスであり、「かわいい」と表現されたキャラクターデザインがプレイヤーの手を動かし続ける原動力となっている点は、クリッカーというジャンルにおいて特に重要な要素だ。

ジャンルタグに目を向ければ、シスター・触手・異種えっち・孕ませ・出産・ぼて腹といったフェティッシュが集約されている。これらは近年の成人向け同人ゲームにおける一つの人気軸を形成しており、本作はその需要に対して誠実に応えた設計になっている。加えて「滅ぶ世界」というゲームの到達点として設定された終幕の演出は、クリッカーという軽量なゲーム体験に対して意外なほどの世界観的スケールをもたらしており、ただの作業ゲーに留まらない読後感——いや、プレイ後感を残す。フレーバーテキストを担当した犬侍氏の言語センスが、この薄さの中に奥行きを生み出している一因だろう。

音楽については外部音楽素材の活用という選択がなされており、ゲームの雰囲気を損なうことなくプレイ体験を下支えしている。ボイスはないものの、擬音による演出がその代替として機能しており、テキストと視覚情報の組み合わせで想像力を刺激する構成は、この種のゲームにおける一つの正解形だ。

1万5千本という販売実績と4.34という評価点は、本作が確かな需要の上に立つ完成度を持つことを証明している。スマートフォンというプラットフォームで成人向けクリッカーを成立させた「I'm moralist」の手腕は、今月の注目作としてこの誌面に掲載するに十分な説得力を持つ。軽くて深い——その矛盾した形容が本作を最もよく言い表す言葉として、編集部の評として残しておきたい。

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