今回編集部が取り上げるのは、サークル「あつかん」が手がけたスマートフォン向けの異色作、「愛の監禁ごはんはXXXチャーハン」である。ツクール製ホラーの系譜に連なりながらも、そのタイトルからして一筋縄ではいかない本作は、リリース以来7,762本という販売実績を積み上げ、114件の評価から算出された4.28点という高得点が示すとおり、同人ゲームの世界でも確固たる地位を築きつつある注目作だ。
本誌が特にこの作品に目を向けた理由は、そのジャンルタグの組み合わせの妙にある。「感動」「サスペンス」「バイオレンス」「ホラー」「狂気」「猟奇」——これだけ聞けば、純粋な恐怖体験として完結する作品を想像するだろう。ところが、そこに「感動」という言葉が同居していることに、本作の本質がある。ただ怖い、ただ残酷というだけの作品ではなく、その狂気の奥底に何らかの感情の核が宿っているのだという予感。この矛盾を孕んだジャンル設計こそが、プレイヤーを惹きつける最初の罠だ。
タイトルにある「監禁」と「ごはん」という組み合わせは、日常と非日常の衝突を端的に体現している。食事という、人間にとって最も根源的な行為が、閉じ込めるという暴力的な状況と結びついたとき、そこに生まれるのは単純な恐怖ではなく、奇妙な親密さと歪んだ愛情の匂いだ。「XXXチャーハン」という伏字交じりの料理名が何を指すのか、本編を進める中でその意味が明らかになっていく構造は、サスペンス的な牽引力として機能し、プレイヤーをスクリーンに釘付けにする。
ツクール製ゲームというフォーマットは、しばしば「低予算」「シンプル」という先入観とともに語られるが、本作においてはそれが逆に強みへと転化している。見慣れたRPG的グラフィックの中に突如差し込まれる猟奇的な演出や、素朴なマップ構造の中に巧みに埋め込まれた閉塞感——このギャップこそが、プレイヤーの心理的防衛を崩す仕掛けとして働く。スマートフォンという、日常の延長にあるデバイスでこの体験を届ける選択もまた戦略的で、電車の中、寝室の布団の中、そういった日常的な場所でこそ本作の狂気は深く染み入る。
編集部が特筆したいのは、この作品が持つ「感動」の側面である。7,762本というセールスを支えているのは、単にホラーファンだけではないはずだ。猟奇的な外装の内側に人間ドラマが宿っているという口コミが、ジャンルをまたいでプレイヤーを引き寄せたと見るのが自然だろう。4.28点という評価点は、ホラー・猟奇系タイトルとしては異例に高い水準であり、それは恐怖体験としての完成度だけでなく、物語としての着地点に対する満足感が票を押し上げていることを示唆している。怖がらせるだけで終わらない、その一点が本作を凡百のツクールホラーと差別化している。
あつかんというサークル名もどこか温かみを感じさせる。熱燗、つまり温めた酒——その言葉には、刺激と温度が共存している。辛口でありながら体を温める、そんな作風の矜持がサークル名に込められているとすれば、「愛の監禁ごはんはXXXチャーハン」はその姿勢を体現した一本だといえる。狂気と愛情、暴力と食事、恐怖と感動——相反するものを一皿に盛り込んだこの作品は、食べ終えた後にも長く後味を引く、そういう種類のゲームである。スマートフォン向けという間口の広さも相まって、今後さらに評価が積み重なっていくことは間違いない。
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