【スマホ版】彼女と痴○と満員電車

Circle: 黄色いリボンのワンピースRelease: 2024/07/19
★ 3.66(70 reviews)Sales: 1,117

今回編集部が取り上げるのは、サークル「黄色いリボンのワンピース」が手がけるスマホ向けADV作品、「【スマホ版】彼女と痴○と満員電車」である。

電車痴漢という題材は成人向け同人ゲームの中でも息の長いジャンルだが、本作はその定番フォーマットを誠実に、かつ丁寧に仕上げた一本として本誌編集部の目に止まった。販売数1,117本、評価3.66点(70件)という数字は、ニッチなスマホ向け同人市場においてけっして小さくない支持を示している。評価の絶対値こそ飛び抜けてはいないものの、レビュー件数の多さがこの作品の一定の普及力を物語っている。

主人公は女子校に通う高校生・西條英美里。控えめな体型ながら美しい肢体を持つ彼女が、毎日の通学路として利用する満員電車で痴漢の標的にされるところから物語は始まる。序盤は衣服越しに尻を触られる程度の接触にとどまるが、それが日を追うごとにエスカレートしていく構成は、段階的な緊張感の醸成という点で丁寧な設計がなされている。こうした「徐々に侵食されていく日常」の描写は、本ジャンルのファンが求める心理的没入感を着実に積み上げるものだ。

プロローグに置かれた「電車痴○。それは現代社会のバグである」という一文は、作品の立ち位置を端的に示している。告発的な語り口で現実の問題に言及しながら、その「バグ」の内側に読者を引き込んでいく手法は、単純な劇画的エロスとは一線を画す。被害者視点から描かれる恐怖と羞恥の混在、声を出せないまま犯罪者の玩具にされていく屈辱感——こうした感情の重層性こそが、本作の物語的な核をなしている。

英美里というキャラクターの造形にも言及しておきたい。苦手科目が数学と理科という設定や、満員電車への辟易感といった等身大の描写が、彼女をただの記号的なヒロインに終わらせていない。貧乳・微乳系の体型設定と組み合わさることで、「守られるべき日常を生きる少女」というイメージが強調され、それが失われていく過程の落差がドラマとして機能している。キャラクターの背景情報を丁寧に積み上げることで、Hシーンに至る感情の落差を最大化する——この設計の意図は明確だ。

スマートフォン向けに最適化された本作は、縦スクロールや片手操作を前提とした画面設計がなされており、PC版とは異なる没入体験を提供する。電車内という「移動中の閉鎖空間」をテーマにした作品を、まさに移動中のデバイスで楽しむという体験の一致は、制作側が意図したかどうかにかかわらず、作品とメディアの親和性として面白い側面を持っている。

本誌が注目した今月の一作として、「【スマホ版】彼女と痴○と満員電車」は電車痴漢ジャンルの入門としても、ジャンルファンの定番補完としても、一定の完成度を備えた作品だと断言できる。サークル「黄色いリボンのワンピース」の語り口には粗削りな部分もあるが、キャラクターへの解像度の高さと、段階的に緊張感を高めていく構成力は、このジャンルへの真摯な向き合い方の表れである。同人ゲームの豊かさとは、こうした小さな誠実さの積み重ねによって支えられているのだと、改めて実感させてくれる一作だった。

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