【スマホ版】旧校舎の大妖怪

Circle: 黒猫喫茶店Release: 2024/09/13
★ 4.54(520 reviews)Sales: 6,780

今回編集部が取り上げるのは、サークル「黒猫喫茶店」が手がけたスマホゲーム『旧校舎の大妖怪』である。DLsiteにおける販売本数6,780本、評価4.54点(520件)という数字が、この作品の完成度を静かに、しかし雄弁に語っている。同人ゲームの世界において、520件という評価数は決して軽い数字ではない。それだけの人間が、プレイし終えた後に何かを伝えたいと感じた作品だということだ。

物語の骨格はシンプルでありながら、そのシンプルさが功を奏している。図書委員を務める主人公と、幼馴染の香坂結愛が旧校舎の図書室へ赴くところから全ては始まる。そこに広がっていたのは、霊や妖怪が跋扈する「向こうの世界」へと繋がる怪異空間だった。ホラーとエロスを掛け合わせるという手法自体は同人界隈においてある程度確立されたものだが、本作がひと味違うのは、その怪異の中に「いづな」という存在を配置した点にある。大妖怪を名乗る狐の妖怪でありながら、人間を好くという屈折した純粋さを持つ彼女が仲間として加わることで、ただ逃げるだけのホラー体験が、奇妙な温かみを帯びた冒険譚へと変貌する。

キャラクター設計の巧みさも特筆に値する。結愛は160センチ・Kカップというスペックながら、主人公への想いをずっと胸に秘めてきた不器用な幼馴染というキャラクター性を持つ。一方、妹の香坂愛莉は156センチ・Lカップで、姉よりも先に主人公を意識しながら、照れ隠しでキツく当たってしまうという複雑な感情を抱えている。この姉妹の関係性が物語に人間的な厚みを加えており、単純なヒロインの対比に終わらない奥行きを生み出している。いづなに関しては132センチという小柄な体躯にLカップという組み合わせが、「大妖怪」という称号との絶妙なギャップを形成し、キャラクターとしての個性をより際立たせている。

エロコンテンツの密度という観点でも、本作は水準を十分に超えている。基本HCGが25枚、Hイベントは32〜33種を数え、さらに「サクッとHイベント」と銘打たれた短尺イベントが14種追加されている。この「サクッとH」という概念は、プレイヤーの満足度設計として興味深い判断だ。ストーリーの流れを重視するプレイヤーと、手軽にエロコンテンツにアクセスしたいプレイヤーという、やや相反する需要を同時に満たそうとする構成は、本作の丁寧な作り込みの姿勢を反映している。

特に評価したいのがドットアニメ40種という数字だ。体位5種にヒロインの衣装差分等を掛け合わせて40種という設計は、素朴なドット表現の中に反復プレイへの耐久性を埋め込む手法として非常に有効に機能している。スマホゲームというプラットフォームの特性上、隙間時間に起動して楽しむというシチュエーションが多く想定されるが、ドットアニメのループ感はそうした短時間利用にもよく馴染む。プレイ時間が4〜5時間程度に設計されているという点も、ボリューム感とテンポの両立を意識した結果だろう。エンディングが5種類用意されていることと合わせると、周回プレイの動機も十分に存在する。

本誌が同人作品を評価する際に重視するのは、「作り手の意図がプレイヤーにきちんと届いているか」という一点だ。ストーリー・キャラクター・エロコンテンツの三軸がそれぞれ機能しながら、互いを補強し合っている作品は決して多くない。『旧校舎の大妖怪』は、その三軸が丁寧に組み上げられた作品として、今月の編集部推薦に恥じない完成度を持っている。6,000本超という販売実績は、黒猫喫茶店がすでに同人ゲームの作り手として確かな支持基盤を持っていることを示しており、今後の動向も引き続き注視していきたいサークルのひとつである。

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