今回編集部が取り上げるのは、からあげカンパニーによるスマートフォン向けおさわりゲーム「このお嬢様、無知につき」である。DLsite上での販売数は1万661本を超え、602件の評価から算出されたスコアは4.29点という高水準をマークしている。数字だけを見れば優秀な同人タイトルは他にも存在するが、本作が際立っているのはその数字の「密度」だ。購入者のうちレビューを書く層がこれほど厚いということは、作品に対して何かを言わずにはいられないという体験の濃さを示している。本誌がこの作品を今月の注目作として選んだ理由も、そこにある。
物語の骨格は、一見シンプルだ。教師の夢を諦めた主人公が、お嬢様学園に通う少女・鳳エリカと偶然出会い、屋敷の執事兼教育係として雇われる。そこから始まる日常の中で、ある「事故」が二人の関係を塗り替えていく。エリカは性に関する知識をほぼ持たず、主人公が行う行為の意味すら理解していない。この「無知」こそが本作の根幹であり、同時に最大の引力となっている。知らないがゆえに抵抗せず、知らないがゆえに無垢に笑う。そのアンバランスさが、プレイヤーの倫理観と欲求の間に絶妙な緊張感を生み出している。
キャラクターの造形についても触れておきたい。エリカは「背も胸も全てが小さいが、元気と自信だけは人一倍大きい」という設定で描かれており、つるぺた・貧乳といったジャンル的要素を自然にキャラクターの個性として昇華させている点が秀逸だ。自信家でありながら無防備、高貴でありながら子どもっぽい。その矛盾を成立させているのが、白川パコによるフルボイス演技である。日常パートとおさわりパートの双方でボイスが収録されており、会話の中でのエリカの快活さと、触れられた際の戸惑いや無垢な反応が、声という媒体を通じてリアルに伝わってくる。同人ゲームにおけるボイスの価値を改めて実感させてくれる仕上がりだ。
ゲームシステムの設計にも、からあげカンパニーの丁寧な作り込みが見てとれる。おさわりゲームは射精か体力・睡眠ゲージの消費で終了する仕組みで、プレイヤーはエリカを起こさないよう気を遣いながら行為を進める「すやすやえっち」の緊張感を楽しめる。胸や各部位のレベルを上げることで新たな調教が解放されるという成長要素も備わっており、単調になりがちなおさわり系タイトルに対してゲーム的な達成感を付与することに成功している。ケーキによる好感度上昇という日常的なルーティンに、悪戯を仕込むか否かという選択を混在させている点も、プレイヤーの方向性を問う設計として興味深い。
エンディングは全5種類が用意されており、クリア後には純愛ルートと調教ルートの分岐が存在する。この二項対立の設計は、単なる周回プレイの促進ではなく、プレイヤーがエリカとの関係においてどのような「教育者」であったかを問い直す構造になっている。純愛ルートでは穏やかな日常への帰還が描かれ、調教ルートではより踏み込んだシーンが待ち受けるという。どちらのルートを選ぶかという問いは、ゲームの外側にあるプレイヤー自身の内面への問いかけでもある。スマートフォンという携帯性の高いプラットフォームにこの作品を落とし込んだことで、いつでも・どこでも「エリカの世界」に没入できる環境が整っており、日常への浸透度という点でも本作は一段上の体験を提供している。
スマホ向け同人ゲームはPC版と比較して操作性や表現面で制約を受けることも多いが、本作においてはタッチ操作との親和性が高いおさわりジャンルを選んでいる点が戦略的に正しい。指で触れるという行為がゲームのコアメカニクスと重なり、プレイヤーとエリカの距離を物理的に縮める効果を生んでいる。販売数1万本超という実績は、そのプラットフォーム選択の正しさを市場が証明した結果だと言えよう。
無知であることが守る盾にも、傷つける刃にもなりうる。エリカという少女を通じて、本作はプレイヤーにその両面を突きつける。編集部としては、このジャンルに関心のある読者に対して自信を持って推薦できる一作として、本誌のページに刻んでおきたい。
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