今回編集部が取り上げるのは、サークル・魔泥沼が手がけるスマホ向け探索型短編RPG「見習い魔導士シェロのおつかい」だ。562本という販売実績に加え、30件の評価から算出された4.77点という数字は、同ジャンルの作品群の中でも際立った支持を示している。短編作品でこれほど高い評価を維持し続けるのは容易ではなく、その完成度の高さが数字に如実に表れているといえる。
本作の主人公・シェロは、師匠とともに山奥の小屋でひっそりと暮らす魔導士見習いの少年だ。師匠から頼まれたおつかいを果たすべく、慣れない町へと足を踏み入れる——という導入は一見のどかだが、そこに仕掛けられた構造が実に巧みである。山育ちのシェロが「むっつりスケベ」という属性を持つことで、町に潜む様々な誘惑との対比が生まれ、物語全体に独特の緊張感と笑いが生まれている。使命感と煩悩のせめぎ合いというシンプルな図式が、プレイヤーを引き込む推進力として機能しているのだ。
探索型RPGという形式もこの作品の設計に巧く噛み合っている。プレイ時間は30分から1時間程度とコンパクトにまとめられており、スマートフォンでのプレイという環境を強く意識した設計が随所に感じられる。短い時間の中に無駄なく詰め込まれたイベントの密度は高く、「遊び始めたら気づけば終わっていた」という体験を自然に作り出している。長大なRPGに疲れたプレイヤーへの清涼剤として機能する一方で、内容の濃さは決してボリュームに負けていない。
グラフィック面においても本作は侮れない。基本CGが10枚という数字だけを見れば控えめに映るかもしれないが、総CG数は80枚に達する。この差は、イベントの分岐や差分の豊富さを物語っており、プレイヤーの選択や行動によってどれだけ多様な絵が用意されているかを示す指標だ。シェロが誘惑に屈するか踏みとどまるか、その都度ことなる展開とビジュアルが待ち受けているとなれば、複数回のプレイを自然と促す構成になっているといえる。
サークル・魔泥沼の作風については、タイトルの語感からも伝わるように、どこかコミカルでゆるやかな温度感を保ちながら、エロティックな要素をしっかりと織り交ぜるスタイルが特徴的だ。「むっつりスケベのエロガキ」という主人公の属性をあえて前面に打ち出す姿勢は、作品のトーンに対する自信の表れでもある。説明的になりすぎず、キャラクターの愛嬌と状況のおかしさで読み手を引き込む筆致は、同人ゲームとしての個性を際立たせている。
本誌が注目したいのは、このジャンルにおける「短編の完成形」という点だ。同人ゲームには長大なボリュームを売りにする作品も多い中、本作は真逆のアプローチを取る。限られた尺の中で主人公の造形を確立し、町の雰囲気を描き、複数のイベントを展開し、プレイヤーに達成感と満足感を与える——この設計の精度こそが、高評価の根拠だと編集部は見ている。短いからこそ冗長さがなく、短いからこそ密度が映える。シェロのおつかいは、完遂されるかどうかを問わず、プレイヤーの記憶にしっかりと爪痕を残す一作だ。
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