今回編集部が取り上げるのは、サークルPAONによるスマホゲーム『無知○リとバケモノ』である。935本という販売数と、4.25点(8件)という評価スコアを記録している本作は、ホラーと異種えっちを軸に据えた独特の世界観が、静かに、しかし確実にユーザーの間で支持を集めている一作だ。
同人ゲームの世界において、スマートフォン向けという選択肢は依然として難しい立ち位置にある。PCブラウザやダウンロード形式が主流を占めるこの界隈で、あえてスマホプレイヤーに向けて最適化されたゲーム体験を提供しようとするサークルの姿勢は、それだけで編集部の目を引くものだった。手軽に手にとれる媒体だからこそ、没入感の設計が問われる。本作はその点において、特筆すべき工夫を随所に見せている。
ジャンルタグを眺めると、本作の輪郭が少しずつ浮かび上がってくる。「ホラー」「拘束」「触手」「出産」「妊娠/孕ませ」「異種えっち」——これらのキーワードが一列に並ぶとき、そこには単なるエロティシズムを超えた、ある種の世界構築への意志が感じられる。「バケモノ」というタイトルの後半部分が象徴するように、本作の性的描写は異形の存在との邂逅という文脈の上に丁寧に載せられており、ホラー演出がその緊張感を下支えしている。恐怖と官能が交差する瞬間の描写は、このジャンルの醍醐味のひとつであり、PAONはその配分を巧みに操っている印象だ。
「つるぺた」「黒髪」というヒロイン造形のタグも見逃せない。無垢で幼い外見を持つヒロインが、圧倒的な異形の存在と対峙するという構図は、それ自体がひとつの美学を形成している。「無知」という言葉がタイトルに冠されていることは示唆的であり、主人公の置かれた状況の理不尽さ、そして逃れられない運命への引きずり込まれ方が、プレイヤーの感情をじわじわと侵食していく設計になっているのだろう。この「知らないまま連れて行かれる」感覚は、ホラーゲームとして非常に正統的なアプローチである。
スマホゲームという形式上、タップ操作や縦スクロールに最適化されたUI設計が求められるが、本作がその課題にどう向き合っているかも興味深いところだ。アダルト系スマホゲームはUIの粗さが批判の矢面に立ちやすいジャンルでもある。しかし評価4.25点という数値は、少ない件数ながら決して悪くない印象を与えており、プレイアビリティの面でも一定の水準が保たれていることをうかがわせる。
触手や出産といったジャンルタグが示す描写の濃度は、本作がいわゆる「軽め」の作品ではないことを物語っている。コアなファンが求める重厚な性的描写と、ホラーアドベンチャーとしての物語進行が両立されているとすれば、それはサークルの演出力の賜物と言えよう。同人ゲームにおいて、エロスとナラティブを同時に成立させることは難しく、どちらかに傾くと作品としてのバランスが崩れる。本作が935本という数字をたたき出しているのは、その両輪がある程度機能している証拠と見ていい。
PAONというサークルが、スマホという間口の広い媒体を選びながらも、内容は決してライトに流れない骨太な方向性を貫いている点は、本誌が特に評価したい部分だ。ニッチでありながらスマートフォンで遊べるという間口の広さ——そのギャップそのものが、本作の個性となっている。935本という実績は、まだ伸びしろを秘めた数字でもあり、このジャンルの深部に踏み込む覚悟を持つプレイヤーにとって、本作は十分に応えうる密度を持った一本であると、編集部は判断している。異形との邂逅が織りなす恐怖と欲望の物語を、ぜひ手のひらの上で体験してほしい。
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