【スマホ版】超能力大作戦X

Circle: あぶらそば日和Release: 2025/10/15
★ 4.50(24 reviews)Sales: 515

今回編集部が取り上げるのは、あぶらそば日和が手がけるスマートフォン向け同人ゲーム「超能力大作戦X」である。販売数515本、評価4.5点という数字が示すように、リリース後も着実にファンを獲得し続けているタイトルだ。スマホゲームという間口の広さもさることながら、そのゲームデザインの独自性が本誌の目を引いた。

本作の舞台は、人類の一部に超能力が発現し、それが社会問題化した近未来の日本である。日本政府の秘密組織「超能力対策室」が才能ある学生を抜擢し、世界最凶の超能力犯罪者「X」への対抗に当たらせる——というSF的な骨格を持つ設定は、どこかレトロな70年代超能力漫画を彷彿とさせる。主人公「脳山スグル」というネーミングセンスひとつとっても、作者の世界観構築へのこだわりが透けて見える。スグル、というのはかの有名な超能力少年漫画へのオマージュと見てほぼ間違いないだろう。こうしたポップカルチャーへの目配せが作品全体に軽やかなコメディトーンをもたらしており、ジャンルにコメディが堂々と掲げられている理由も頷けた。

ゲームシステムの構造は非常に明快である。プレイヤーはマップを自由に歩き回りながらイベントを回収し、サイキックパワーを段階的に育てていく。いわゆる「戦闘システムなし」という設計は、アクション要素を排除することでストーリー体験に集中させる意図が明確だ。サイキックパワーの数値と各所の選択肢が絡み合い、ストーリーが分岐する仕組みは、プレイヤーの行動が物語の形を変えていくという手触りを生む。一周で全てを回収できない構成が、周回プレイへの動機づけとなっているのも計算された設計といえる。

本作の中核を担うのが、サポートキャラクター「禍捻パルス」の存在だ。サイコキネシス使いの美少女という属性はオーソドックスに見えるが、本作における彼女の役割は単なる添え物ではない。透視・念写・催眠といった超能力が、パルスに向けられる形でサイキックパワーの成長と結びついているという構造は、主人公の「強さ」とヒロインの「被害」が表裏一体となっている点で非常に巧みだ。正義の超能力者として敵と戦う建前と、その過程でヒロインが羞恥と屈辱にさらされるという逆説的な構図が、コメディ色と背中合わせに成立している。この矛盾した緊張感こそが、本作のゲームとしての奇妙な吸引力の源泉である。

ジャンルタグには学生・屋外・おもらし・羞恥・屈辱・露出・トランスといった要素が並ぶ。本作は「本番シーンは少なく、羞恥プレイかなり多め」という作者自身の言葉が示すとおり、直接的な性描写よりも状況と感情の演出に重きを置いた作風だ。公共の場での羞恥、精神干渉による意図せぬ行動、覗きや念写といった一種の「見る・見られる」関係性の探求は、学生という舞台設定と相まって、独特の閉塞感と高揚感を作り出している。イベント数20程度、CGは11枚という規模感は決して大作ではないが、この分量で世界観・キャラクター・ゲームシステムをきれいにまとめ切っているのはスマホゲームという媒体の特性をよく理解した作りといえる。

評価24件で4.5点という水準は、単なる客寄せタイトルではなく、内容で真剣に評価されている証左である。「面白かった」という素朴な感想に混じって、ゲームの構造に言及するレビューが複数見受けられるのも、プレイヤーがシステム設計の工夫を実際に体感していることを示している。スマートフォン向けという判断も的確で、隙間時間にマップを巡回しながらイベントを積み上げていくプレイスタイルは、スマホの操作感と相性がいい。

超能力というモチーフに羞恥と屈辱を重ねるというアイデアは珍しくないが、本作はそれをコメディの文法で包み、ゲーム的達成感と紐付けることで独自の体験を作り出している。あぶらそば日和という作者名のゆるさと、作品の構造的な緻密さのギャップもまた、この作品の個性として記憶に残る。スマホ同人ゲームという領域で着実に足跡を刻んだ一本として、本誌はこの作品を記録に値すると判断した。

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