今回編集部が取り上げるのは、サークル「uchu」が手がけたAndroid向けスマホゲーム『チッポケの伝説』である。販売数4,112本、評価スコア4.22点(645件)という数字が示すとおり、同人スマホゲームというニッチなフィールドにおいて、本作は確かな爪痕を残している。
同人ゲームの世界でスマートフォン向け作品が評価を獲得するのは、PC向け作品に比べてはるかに険しい道のりだ。プラットフォームの制約、操作性の設計、そして何より「スキマ時間に手に取ってもらえるか」というモバイルならではの関門がある。その中で本作は、ファンタジーと魔法というオーソドックスな題材を選びながらも、独自の色を打ち出すことに成功している。
タイトルの「チッポケ」という言葉には、小さく、けれどもどこか愛嬌のある存在を想起させる響きがある。ファンタジーRPGや魔法少女ものが乱立する現代の同人ゲームシーンにおいて、あえて「ちっぽけさ」を全面に押し出すネーミングセンスは、プレイヤーに対して「肩の力を抜いて楽しんでほしい」というメッセージを無言で伝えているかのようだ。それでいてレビュー645件という数は、決して小さな反響ではない。
評価4.22点という数字をどう読むか。本誌が同人ゲームの評点を見るとき、4.0を超えるか否かをひとつの基準にしている。4点台前半は「満足したが、尖った部分も感じた」という層が一定数いることを示唆しており、ある意味では作家性の強い作品に多い分布だ。無難に削ってすべての評者を満足させようとするのではなく、独自のビジョンを貫いた結果として生まれる凸凹——本作の4.22点はそういった種類の誠実さを感じさせる。
ファンタジーと魔法というジャンルの組み合わせは、一見すると手垢のついたテーマに映る。だが、これをスマートフォンという画面サイズと操作感に落とし込む際、開発者は相当の工夫を迫られたはずだ。大きな見せ場をどこに設けるか、魔法表現をどの粒度で実装するか、テキストとビジュアルと操作の三者をどう調和させるか。4,000本を超える販売数は、それらの問いに対してサークル「uchu」が納得のいく答えを出せた証左だと本誌は見ている。
スマホゲームという媒体は、PCゲームとは異なる「気軽さ」を武器にする。電車の中で、就寝前のひとときに、ふと手を伸ばして遊べる。その文脈において、ファンタジー世界の「伝説」をテーマにしながら「チッポケ」という言葉で敷居を下げる本作の姿勢は、モバイルゲーム設計としても理に適っている。壮大な叙事詩ではなく、等身大の小さな冒険として物語を紡ぐアプローチは、忙しい現代人のプレイスタイルとも共鳴する。
同人ゲームの世界では、サークルの個性がそのまま作品のトーンに直結する。「uchu」という名前が示す「宇宙」的な広がりと、「チッポケ」という矮小さの対比は、ひょっとするとサークル自身の自己認識——小さな作り手が広大なジャンルに挑む姿——を映しているのかもしれない。そうした背景を想像しながら本作に触れると、ゲームのひとつひとつの設計判断に込められた意志がより鮮明に浮かび上がってくる。
本誌がこうして紙面を割く理由は単純だ。数字が語りかけてくるからである。4,112という販売本数と、645人が実際にプレイして言葉を残した評価——それはある夜、誰かが一人で作り始めたゲームが、確かに多くの人の手元に届いたという事実だ。同人ゲームの豊かさとはそういうところにある。『チッポケの伝説』は、その豊かさを静かに体現している一作として、長く記憶に残るだろう。
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