今回編集部が取り上げるのは、FANTASY・FACTORYが手がけるスマートフォン向け成人向けRPG「ホーリー・ソード・ガール」Android版である。販売数595本、評価4.24点(93件)という数字が示すとおり、このタイトルはPC向け同人ゲームの激戦区を生き延びてなお、スマートフォンというプラットフォームへと戦線を拡大した一作だ。本誌がこの作品を特集に選んだのは、単に数字の堅調さからではない。アクションとサイドビューバトルを組み合わせた独自のゲームシステムと、精緻に設計されたシナリオ分岐、そして声優・春乃つくし氏の演技が三位一体となって生み出す体験の質の高さにある。
ストーリーの骨格はシンプルながらも骨太だ。見習い冒険者の少女「ユアン」は、行き倒れになりかけたところを村人に救われる。しかしその村は折悪しくゴブリンの襲撃を受けており、女性たちが次々と攫われる最中にあった。命の恩人への義理と使命感から、ユアンは単身でゴブリンの巣窟へと踏み込んでいく。この導入の簡潔さは美徳である。長々とした説明的なテキストに頼ることなく、プレイヤーを一気に物語の中心へと引き込む手腕は、同人ゲームにおいて決して当たり前ではない。つるぺたな外見とは裏腹に芯の通った主人公像が、ゲームを通じて丁寧に描かれている点も好感を持てる。
ゲームシステムの設計は、本作最大の工夫が凝縮された部分だ。通常の探索パートはアクション操作を採用しつつも、ボス戦ではサイドビューバトルへと切り替わるという二段構えの構造を持つ。アクションが得意なプレイヤーは俊敏な立ち回りで雑魚を蹴散らせる一方、コマンド入力に慣れ親しんだプレイヤーはボス戦でじっくり戦略を練ることができる。この設計はスマートフォンという操作の制約がある環境においても機能しており、むしろタッチ操作との親和性が意外と高い。幅広いプレイヤー層への配慮が、評価点の安定につながっているのは間違いないだろう。
成人向けコンテンツの充実ぶりも見逃せない。全38シーンに及ぶエロシーンは、大きくモンスターパート・村人パート・商人パートの三系統に分けられ、それぞれが独立した文脈と展開を持つ。モンスターパートでは、同じ魔物に敗北するたびに内容が段階的に変化するという「堕ち」の進行システムを採用しており、単なる敗北ペナルティ以上の物語的意味を帯びている。スライム、ゴブリン、触手といった異種ファンタジー定番の要素が丁寧に網羅されており、ジャンルファンへの目配りも行き届いている。
村人パートは本作の中でも特に異彩を放つ要素だ。主人公が備蓄品を盗んでしまうという過失から始まり、村に滞在する男性たちとの関係が次第に深まっていく展開は、ゴブリン討伐という本筋と並行した裏の物語としての厚みを持つ。最終的な妊娠・輪姦エンディングへ至るルートだけでなく、特定の村人との妊娠出産ハッピーエンドが用意されているという点は、成人向けRPGにおいては珍しく真摯な姿勢である。商人パートも同様に、アイテム取引という利害関係から始まる関係性の変容が段階的に描かれており、単発のイベント羅列に陥っていない。
声優・春乃つくし氏の起用は本作の格を一段引き上げている。エッチシーンの約80%にボイスが収録されており、清楚な雰囲気と濃密な内容との対比が独特の緊張感を生む。同人ゲームにおけるボイス実装は制作コストの問題から中途半端な収録に終わる例も多いが、本作はその点において誠実だ。93件という評価件数は同人スマホゲームとしては決して少なくなく、そのうえで4点台を維持しているという事実が、ゲームとしての完成度を静かに証明している。
FANTASY・FACTORYという名が示すとおり、このサークルはファンタジー世界を舞台とした成人向け作品を着実に積み上げてきた書き手集団である。本作においても、世界観の構築からシナリオの分岐設計、システムの工夫に至るまで、「作り手の意図」が一本の筋となって通っていることが感じられる。ゲームとしての遊びごたえと、成人向けコンテンツとしての密度を両立しようとする姿勢は、本誌が常に推薦したいと考えるクリエイターの在り方に合致している。スマートフォンという日常的なデバイスで、これだけの体験密度を実現した本作は、同人ゲームというジャンルの可能性を静かに、しかし確実に押し広げた一作と言えるだろう。
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