今回編集部が取り上げるのは、たぬきハウスが手がけるスマートフォン向け作品「再建!うみっ娘水族館~寝取られ!浮気!子育て!セカンドライフ物語」である。販売本数928本、評価4.17点(138件)という数字が示す通り、本作はプレイしたユーザーから着実に支持を集めている一作だ。
本作の最大の特徴は、水族館経営シミュレーションという骨太なゲームプレイと、濃密な恋愛ドラマが渾然一体となっている点にある。経営難に苦しむ水族館を舞台に、プレイヤーは資金を集め、空の水槽を少しずつ生き物で満たしていく。ペンギンエリア、川魚エリア、イルカスタジアムと、施設を拡張するたびに水族館が息を吹き返す様子は、純粋なシミュレーターとしても十分な満足感を与えてくれる。魚釣りのミニゲームも海と川で趣向が異なり、単調さを感じさせない作りになっている点は特筆に値する。
本作を語る上で欠かせないのが「うみっ娘」という独自の世界観設定だ。100万人に1人の確率で生まれるとされるうみっ娘たちは、海の生き物と意思を共有できる特別な存在である。館長を務める活発で心優しいヒロインはすべてのイルカと、ベテラン従業員の物静かな女の子はコウテイペンギンと意思が通じるという設定は、単なる恋愛ゲームにとどまらない世界の広がりを感じさせる。生き物との精神的なつながりというファンタジー要素が、日常的な水族館の運営風景に柔らかな彩りを与えているのだ。
一方で本作の核心をなすのが、寝取られ・浮気というテーマである。甘酸っぱい青春模様とは裏腹に、ラッコと意思の通じる小悪魔なサブヒロイン、シャチと共鳴する高飛車な肉食系お姉さん、クラゲと語り合う内向的なメガネっ娘と、個性豊かなサブキャラクターたちが次々と関係に波紋を投げかける。さらに間男陣も単純な悪役として描かれていない点が本誌としては興味深い。バツイチ子持ちの中年男性は誠実さをにじませながらも危うさを秘めており、強欲な金持ち男は欲望に忠実すぎるゆえの異様な存在感を放つ。こうした人物配置の巧みさが、シナリオに深みと緊張感をもたらしている。
ドット絵のグラフィックスタイルも本作の印象を決定づけている要素だ。つるぺたキャラを主軸に据えたビジュアルは、アニメ的な可愛らしさと水族館という舞台の明るい雰囲気によく馴染む。経営の進捗に合わせて水槽が賑やかになっていく視覚的変化は、プレイヤーに達成感を与えるとともに、世界そのものが呼吸しているような生き生きとした感覚を生み出す。ドット表現の温かみは、登場人物たちの感情的なすれ違いや欲望の交錯といった重たいテーマと、不思議なバランスで共存している。
子育て・妊娠・孕ませというジャンルタグが示すように、本作はプレイヤーの選択によって関係の行方が複数の方向に展開していく構造を持つ。純愛として物語を育てることも、寝取られの渦に飲み込まれていくことも、どちらもゲームの正規ルートとして用意されているわけだ。この二面性こそが、4点超えの高評価を支える理由のひとつだと編集部は分析している。明確な善悪を設けず、人間の欲と情愛を等価に描こうとする姿勢は、同人ゲームという表現形式だからこそ実現できた誠実さでもある。
スマートフォン向けに最適化されたこの作品は、隙間時間に経営をコツコツ進め、節目ごとにシナリオを堪能するというリズムが心地よく、日常の中に入り込んでくる間口の広さを持っている。水族館の再建という明るい目標と、登場人物たちの屈折した感情が交差するこの作品は、たぬきハウスが精緻に構築した一つの小世界として、確かな手触りを持って完成している。
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