【Android版】難破宇宙船トドロキ号

Circle: 夏中症Release: 2023/06/21
★ 4.66(183 reviews)Sales: 1,495

今回編集部が取り上げるのは、サークル「夏中症」が手がけたスマートフォン向け探索型短編SFエロRPG、「難破宇宙船トドロキ号」である。販売数1,495本、評価4.66点(183件)という数字が示す通り、同人スマホゲームという競合の少ない領域において、本作は確かな爪痕を残している。

物語の舞台は宇宙だ。宇宙開発社の採用試験に挑む主人公イズミとジョンは、小型宇宙船でのミッション中に予期せぬトラブルへと巻き込まれる。衝突した大型船こそが、秘密裏の実験の果てに消息を絶っていた宇宙船「トドロキ号」であった。謎の生命体"X"との接触、そして副作用として性的理性を侵食していく抗生剤——この設定が本作最大の骨子であり、SFホラーの文脈とエロティシズムを接続する鍵である。薬を打つたびに自分が変わっていくことに気づかないイズミの姿は、単なる官能描写の枠を超え、自己喪失という古典的な恐怖をエロRPGというフォーマットで表現しようとする試みだと読み取ることができる。

本誌がとりわけ注目したいのは、本作の演出設計の方向性である。全画面CGイベントを主軸に据えるのではなく、立ち絵と豊富な差分を用いたライブ感のあるイベント演出を採用している点は、近年の同人RPGの潮流とは一線を画す選択だ。全画面CGは静止した「絵画」として機能するが、立ち絵イベントはキャラクターが画面上に存在し続けることで動的なリズムを生む。巨乳・爆乳というビジュアル的個性を持つイズミが、ぴったりと体に張り付いた宇宙服の差分を経由しながら様々な状況へと追い込まれていく過程は、ページをめくる感覚に近い没入感を与える。これは制作者が「ゲームらしさ」よりも「読み物らしさ」を意識した結果であり、短編という枠組みの中で正しく機能している判断だと評価できる。

探索要素についても言及しておきたい。鍵やギミックを自ら発見し、エロイベントを能動的にトリガーしていく設計は、プレイヤーを受け身の観客ではなく参加者として位置づける。据え置き型と徘徊型のイベントが混在しているという構造は、単純なフラグ管理ゲームにありがちな単調さを回避し、探索の緊張感を維持する工夫として機能している。宇宙船という閉鎖空間の中をくまなく歩き回り、何かを見逃していないか確認する——この行動自体が、ホラーSFの探索型ゲームとしての雰囲気を高めている。

ジャンルタグに「産卵」が含まれている点は、本作の世界観設計を語る上で外せない要素だ。謎の生命体"X"が介在するSF設定と産卵描写の組み合わせは、単なるフェティシズムの羅列ではなく、作品世界のロジックとして機能するよう組み込まれている。出産描写については作者が意図的に除外しており、産卵描写との区別を明示しているあたり、制作者がジャンル内の文脈に対して自覚的であることが伝わってくる。こうした細部の取捨選択の丁寧さが、4.66という高評価の一因になっているのではないかと本誌は見ている。

スマートフォンという媒体を選んだことにも注目したい。同人エロRPGは依然としてPCが主戦場であり、Android向けに最適化された探索型RPGはまだ希少な存在だ。スマホ特有のタッチ操作と短編という尺の組み合わせは、移動中や隙間時間に遊ぶライフスタイルとの親和性が高く、新たなプレイヤー層へのリーチという意味でも戦略的な選択である。1,495本という販売数は、このニッチな市場においてひとつの成功指標として機能している。

夏中症というサークルが本作で示したのは、SF・ホラー・エロという三要素を短編という制約の中で破綻なく成立させる構成力だ。過剰にならず、しかし物足りなくもない——その塩梅の巧みさこそが、183件もの評価から浮かぶ共通の満足感を支えているのだろう。宇宙船という舞台の閉塞感と、ヒロインが内側から変容していくというテーマ性が合致したとき、本作は単なるエロRPGを超えた読後感を残す。編集部として、この完成度は同ジャンルを掘り下げたいプレイヤーに強く推薦できる一作である。

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