今回編集部が取り上げるのは、サークル「しるおち」が手がけるスマートフォン向け搾精ホラーRPG、「あの子、ヤリ部屋でずっと臭い」である。販売数1,125本、評価4.52点という数字が示す通り、この作品はドット絵エロゲーという一ジャンルのなかで、明確な個性と完成度を武器に支持を集めた一本だ。
本作の舞台は、ネット上で「誰でもヤれる女がいる」と噂されるアパートの一室。主人公はその噂に引き寄せられるように部屋を訪れるが、そこに待ち受けるのは精気を喰らう淫魔の罠である。設定自体はサキュバスものの定番を踏んでいるが、しるおちが本作に持ち込んだのは「匂い」という官能的かつ異質なキーワードだ。視覚や接触ではなく嗅覚によって理性を奪われ、抵抗する余地もなく搾り尽くされていく男たちの顛末。この一点において、本作は同ジャンルの群雄割拠の中でひとつの独自性を確立している。
プレイ時間はOPからEDまで約20分という潔さも特筆に値する。本誌がこの作品を評価する理由のひとつは、まさにこの「短編として完結している」という設計思想にある。昨今の同人ゲームは長大な物語を詰め込もうとするあまり、テンポを失う作品も少なくない。対して本作は20分という制約の中で世界観、導入、クライマックス、そしてHシーン7本をきっちりと収めており、密度の高い読後感を生む。一本道のシナリオ構成であるからこそ、演出のリズムが崩れず、プレイヤーは常に作者の意図した文脈の中で興奮を積み重ねていける。
ドットHアニメーションの質についても言及せずにはおられない。全7シーンにわたるアニメーションは、いずれも「汁・液大量」「精液まみれ」というテーマを真正面から描いており、ドット絵という表現媒体がむしろその猥雑さを増幅させる効果を生んでいる。高解像度の立ち絵やフルカラーイラストとは異なる、ドット絵ならではの「粗さの中の艶めかしさ」は、一部のプレイヤーにとって強烈なフェティッシュとして機能する。評価23件中4.52点という高スコアは、コアなドット絵ファン層へのリーチとその満足度の高さを如実に物語っている。
女性優位・逆レ・男性受けというジャンル設定も、本作の完成度を語る上で欠かせない。淫魔ヒロインが一方的に主導権を持ち、男側は抗えない状況に置かれ続けるという構図は、単なるエロスにとどまらず、怪異短編としてのホラー的緊張感と表裏一体になっている。「抗えずに搾り取られる」という状況設定は、プレイヤーに快楽と恐怖を同時に与えるものであり、編集部としてはこれをきわめて巧みなジャンルの交差点と捉えている。
おまけとして収録されたGIFアニメーション形式のドットHアニメも、作品の付加価値として機能している。ゲーム本編を離れた環境でも各シーンを楽しめるという設計は、プレイヤーへの配慮であると同時に、アニメーション単体の完成度に対する作者の自信の表れとも読める。
同人ゲームという世界は、大手の商業作品が踏み込まない題材や表現形式を実験する場としての側面を持つ。しるおちの本作は、その精神を体現しながら、同時に「短くて濃い」という現代的なプレイヤーニーズにも正確に応えている。ドット絵とサキュバス、匂いと搾精という要素群を丁寧に束ね、20分に凝縮した本作の手つきは、コンパクトな同人作品の理想形のひとつを提示していると言えるだろう。本作を手にしたプレイヤーが高い満足度とともに振り返るであろうその20分は、決して薄くない。
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