今回編集部が取り上げるのは、サークル「とらいあんぐる!」が手がけたスマートフォン向けアダルトRPG、「淫魔ネムのChuChu精液探検記」Android版である。PC版として先行していた本作が、スマートフォンという手のひらのプラットフォームへと移植されたことで、新たな層のプレイヤーへとその魅力を広げている。販売数3,660本、評価4.57点(533件)という数字は、同人スマホゲームというカテゴリの中では際立った実績であり、編集部がこの作品を特集対象として選んだ理由のひとつでもある。
本作の核心にあるのは、「新米サキュバスの成長譚」という、一見シンプルに見えて実に巧みに設計されたコンセプトだ。主人公である生まれたばかりのサキュバス・ネムは、姉サキュバスから生きるための術を授けられ、精気を求める旅へと繰り出す。ラスボスへの成長という壮大な目標を掲げながら、道中の町やダンジョンで出会う人間もモンスターも問わず、ひたすらに己の欲求に従って行動するというキャラクター造形は、従来の「守られるヒロイン」像を真っ向から覆す痛快さがある。サキュバスというファンタジー的存在を主役に据えることで、売春・援交・逆レといったジャンル特性を物語の必然として成立させている点は、シナリオ設計の誠実さとして評価できる。
本作が多くのプレイヤーから高評価を受けている最大の要因は、「SMLvシステム」の存在だろう。これはプレイヤーの行動履歴に基づいてSレベル(サディスティック傾向)あるいはMレベル(マゾヒスティック傾向)が上昇していくという、いわば「性癖の育成」を可視化した独自のメカニクスだ。SLvが上がれば攻撃力が増し、殴るほどに快感を覚えるSなサキュバスへ。MLvが高まれば耐久力が向上し、痛みの中に悦びを見出すMなサキュバスへと変貌する。この二極の成長軸は戦闘面での戦略的な差異をもたらすだけでなく、SMLvの変化に応じてイベントそのものが分岐するという構造にも直結している。プレイヤーが積み重ねた選択と行動が主人公の「在り方」を変えていく体験は、単なるスキル分岐以上の没入感を生み出している。
戦闘システムについても特筆すべき点がある。本作では勝っても負けても「H」が発生するという設計が採用されており、これはサキュバスというキャラクター性の論理的帰結として機能している。敵を倒してHをするか、あるいは敗北して犯されるか——いずれに転んでも物語とシステムが整合性を保って進行するこの構造は、プレイヤーに「負けることへの抵抗感」を取り除き、純粋にコンテンツを楽しめる環境を整えている。同人RPGにおいてゲームオーバーの「惨め感」を演出の一部として昇華させることに成功しているサークルは少なくないが、本作の場合はあくまでもサキュバスの快楽優先という軽やかなトーンで統一されており、全体的な雰囲気を重苦しくしていないのが特徴だ。
「服装破損システム」もまた、ビジュアル演出としての完成度が高い。HPの減少に連動して服装が段階的に破れ、さらに表情変化が加わることで、戦況をキャラクターの外見から直感的に把握できる仕組みになっている。テキストベースの情報処理を視覚的補助で補うこの手法は、スマートフォンという比較的小さな画面でプレイする環境においても有効に機能する。
イラストレーター・開栓注意氏によるビジュアルは全31枚のCGに集約されており、60以上のシーン数という密度と相まって、ボリューム感と質の両立を実現している。シナリオはえじむら氏と谷一氏の共同執筆によるもので、軽妙なテキストの中にキャラクターの個性がしっかりと刻まれている。音楽を手がけたごる氏のサウンドもまたファンタジーRPGとしての世界観構築に貢献しており、制作陣の分業体制が有機的に機能していることが窺える。
「Hレーダー」という独創的なシステムも本作の個性として外せない要素だ。Hな行為を重ねるごとにネムの体とレーダー感度が向上し、マップ上のHなイベントを自動的に感知できるようになるという仕組みは、探索の動機づけとしても、キャラクターの成長を実感する装置としても機能する。また「サキュバス売春宿」では金銭よりもHの快楽を優先するという設定が、ゲームの世界観の一貫性を守りつつ反復プレイへの動機を与えている。「まいる~む」を起点にしたシーン回想機能も、プレイヤーのお気に入りシーンへのアクセスを容易にし、長期的なプレイ体験を支える。
評価の高さを裏付けるもうひとつの要因として、本作全体を貫く「自由度の高さ」が挙げられる。S寄りのプレイスタイルを選ぶか、M寄りの展開を楽しむか、売春宿での交流に重点を置くか——プレイヤーの選択によって体験の質感が大きく変わり、リプレイ性が自然に担保されている。同人RPGにおいてリプレイ性の確保は難題のひとつだが、SMLvという二軸の成長システムがそれをエレガントに解決している点は、設計者の手腕として高く評価したい。
533件という決して少なくないレビュー数のもとで4.57点という水準を維持していることは、本作が一過性の話題作ではなく、長期的に愛されているタイトルであることを示している。本誌が同人スマホゲーム市場において本作に注目する理由はそこにある。軽快なファンタジー世界観、プレイヤーの選択に応じて変容するキャラクター、そして戦闘とHを不可分に結びつけた独自システム——これらが一体となって醸成するプレイ体験は、スマートフォンという新たな舞台を得てさらなる広がりを見せている。とらいあんぐる!というサークルの総合的なゲームデザイン力が、この一作に凝縮されていると言えよう。
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