【スマホ版】転送おっさんの異世界のんびりすろーなライフ

サークル: Are!発売日: 2024/12/27
★ 3.03(78 件)販売数: 1,081
作品形式:スマホゲーム

今回編集部が取り上げるのは、サークル「Are!」が手がけるスマートフォン向け異世界ファンタジーRPG、「転送おっさんの異世界のんびりすろーなライフ」である。販売数1,081本、評価3.03点(78件)という数字は、一見すると平凡に映るかもしれない。しかしこの作品、数字だけで語るには惜しいほど独自の哲学を持っている。

昨今の成人向け同人ゲーム市場において、「異世界転生」というジャンルはもはや飽和状態にある。勇者として無双する、あるいは最強チートで無双するという定番の文法を踏み台にしながら、本作が提示するのは逆説的なコンセプトだ。すなわち、「別に頑張らなくてもいい」という解放感である。転生したおっさんが主人公であり、世界を救うことは他の冒険者たちに丸投げして、自分はのんびり稼いでのんびり遊ぶ。この開き直りのスタンスこそが、本作の核心に据えられた最大の個性だ。

ゲームデザインの面から見ると、本作の肝はキャラクタービルドの自由度にある。転生の際に「素早さ」「強さ」「防御」「魔法」「技能」「回復」「生成」「魅力」の8種のパラメータを自由に割り振ることができ、この選択がプレイヤーの体験を根本から変える。素早さ一点特化で回避型のほぼ無敵キャラクターを作ることもできれば、生成に全振りして鍛冶屋として異世界に根を張ることもできる。魅力に力を注げばハーレムへの道が開き、回復を極めれば老婆を若返らせる奇妙な展開まで生じる。そしてサキュバスのスキルを習得して淫魔として生きるルートも存在するというのだから、ジャンル表記の「サキュバス/淫魔」はただの飾りではない。これだけ多様な分岐をスマホゲームとして一本にまとめているのは、制作側の意欲の表れといえる。

「のんびりスローなライフ」というタイトルの皮肉が光るのは、実際には極振りすると「のんびりできない」という逆説的な設計にある。つまり本作が問いかけているのは、プレイヤーがどんな人生を選ぶかという自己投影の問題だ。破壊神を倒して世界平和を実現するルートも用意されているが、それを選んだ時点でタイトルとの約束を自ら破ることになる。この遊び心あふれる自己矛盾が、繰り返しプレイを促す仕掛けとして機能している。転生の間にいつでも戻って人生をやり直せる設計も、この「試行錯誤するのが楽しい」という体験を後押しする。

成人向けコンテンツとして見た場合、宿屋という「お楽しみスポット」を中心とした風俗・ソープ要素が主軸となっており、稼いだ金を使って楽しむという経済循環の仕組みがゲームループに組み込まれている点は秀逸だ。ただ遊べるだけでなく、そこに至るまでの「稼ぐ」というプロセスが意味を持つよう設計されている。プロのお姉さんたちとの泡まみれのハーレムプレイはもちろん、交渉次第でプロ以外の登場人物ともエッチな関係が持てるという柔軟さは、ただの消費行為に終わらないRPGとしての厚みを与えている。

一方で評価3.03点という数字には、正直に向き合う必要がある。本誌がこの点数を目にして感じるのは、コンセプトの豊かさと実装の完成度との間に、一定の乖離が存在する可能性だ。78件という評価件数は決して少なくなく、1,081本という販売数に対して相応の反応が集まっていることを示している。アイデアの奇抜さや選択肢の多さに魅力を感じながらも、スマートフォンというプラットフォームの操作性や、ゲームバランスの調整に関して「惜しい」と感じたプレイヤーも一定数いたであろうことは、想像に難くない。それでも1,000本超えの販売数は、この種の実験的な作品が確かな支持層を持つことの証明でもある。

スマートフォンという媒体を選んだことも、本作の性格と無縁ではない。「のんびりすろーなライフ」を体現するかのように、隙間時間にちびちびと進められるスマホゲームという形式は、タイトルとの相性がいい。破壊神を倒す英雄譚ではなく、異世界でただ生活していく感覚を、日常の延長として楽しむ。そういう需要に対して、本作はきちんと答えようとしている。

サークル「Are!」のこの作品は、荒削りな部分を持ちながらも、「異世界転生ゲームとはこうあるべし」という固定観念をゆっくりほぐしていく。雑誌的な見方をすれば、満点を狙う優等生ではなく、独自路線を貫く問題作に近い。それが今月の注目作として本誌の目に留まった理由でもある。異世界をのんびり生きたいと思うプレイヤーほど、このゲームが仕掛ける「でも頑張れちゃうよ?」という誘惑に、きっと苦笑いしながら落ちていくだろう。

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