【スマホ版】悪の結社はじめました -悪者として世界を相手に暴れまくるフリーシナリオRPG-

サークル: かみつまき発売日: 2025/01/15
★ 3.57(44 件)販売数: 824
作品形式:スマホゲーム

今回編集部が取り上げるのは、かみつまき制作による意欲的なフリーシナリオRPG「悪の結社はじめました」のスマートフォン版である。魔法少女・変身ヒロイン・悪堕ちといったジャンルが交差するこの作品は、824本という販売数を記録し、44件の評価から3.57点という数字を獲得している。数値だけを見れば中堅的な立ち位置に見えるかもしれないが、本誌がこの作品に注目した理由はもっと深いところにある。

本作の出発点は、「天才スリ師」という一風変わった主人公設定だ。魔法少女が存在する世界において、主人公が持つのは魔法でも超人的な戦闘力でもなく、相手の持ち物を奪うという極めて地味なスキル一つのみである。しかしこの設定が絶妙に機能している。魔法少女は杖なしでは戦えない——という世界観の「穴」を鋭く突いた発想であり、強大な力と華やかな衣装を誇るヒロインたちが、スリ師一人に翻弄されるというギャップが本作の根幹をなしている。弱者が知恵と特殊スキルで巨大な力に対抗するという構図は、フィクションにおける普遍的な面白さを持っており、かみつまきはそれをエロティックな悪役ファンタジーの文脈に見事に落とし込んでいる。

フリーシナリオという設計は本作の最大の強みであり、同時に最大の賭けでもある。魔法少女軍団、戦隊の組織、孤高の戦士、学園女戦士という正義側の勢力と、死ね死ね団、ジョッカー、そして国家権力という多様な組織群が世界に存在し、プレイヤーはそれらと連携・裏切り・抗争を繰り返しながら自組織の勢力を拡大していく。単純な一本道ではなく、各組織との関係値がゲーム世界のダイナミクスを動かす構造は、同ジャンルの作品群の中でも際立った野心を感じさせる。国家権力を掌握して軍事力で全組織を蹂躙するも良し、学園に潜む女戦士を一人ずつ探し出すも良し、あるいはスリ技術だけで犯罪王を目指すという異色のルートまで用意されているというのだから、設計者の遊び心は相当なものだ。

組織の成長に連動してアジトが拡張されていくシステムも見逃せない。序盤の小規模な隠れ家から始まり、戦力増強に伴って大規模な行動が可能になる点は、いわゆる「育成・経営」的な快楽を提供している。捕らえた魔法少女を洗脳・改造して手下として活用できるというメカニクスは、このジャンルを好む読者には刺さる要素であり、単なるシナリオRPGを超えた複合的な楽しみ方を提示している。

ただし、3.57点という評価は一点の留保を示唆している。フリーシナリオの自由度が高ければ高いほど、ゲームとしての導線設計やバランス調整は困難を極める。同人ゲームのフォーマットの中でこれほど広大な世界観を実装しようとすれば、ボリュームの不均一さや一部シナリオの粗さといった課題が生じるのも避けがたい現実だ。本誌の読者であれば、こうした同人作品の「荒削りな魅力」を承知の上で楽しむリテラシーを持っているはずだが、完成度への期待値の持ち方は作品と向き合う上での重要な前提となるだろう。

それでもなお、この作品が持つ発想の独自性は高く評価されるべきだ。スリ師という異色の主人公像、複数組織が絡み合うポリティカルな世界設計、そして「魔法少女の天敵」というアイデンティティの確立——これらは明らかに作り手の強い個性から生まれたものである。変身ヒロインや悪堕ちジャンルに一定の需要があるのは本誌も折に触れて論じてきたところだが、そのフォーマットをフリーシナリオRPGという実験的な枠組みに詰め込んだ点で、かみつまきの挑戦は記憶に値する。824本という数字の向こうに、この世界観を支持したプレイヤーたちの存在を感じながら、今後の展開を静かに注視していきたい一作である。

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