【スマホ版】逆夢のメナスフィア

サークル: クレイジー二厘発売日: 2025/10/15
★ 4.66(32 件)販売数: 686
作品形式:スマホゲーム

今回編集部が取り上げるのは、クレイジー二厘が手がけたスマートフォン向けRPG「逆夢のメナスフィア」である。評価4.66点(32件)、販売数686本という数字は、同ジャンルの新作が乱立するなかでも着実に支持を集めた証左であり、本誌が注目した理由もそこにある。

本作を語るうえでまず触れるべきは、その物語の骨格だ。主人公と妹・メアが静かな日常を送るところへ、淫魔のリリリが突然現れる——というイントロダクションは、一見よくあるハーレムファンタジーの導線に見える。しかし実際にプレイヤーが体験するのは、もう少し重層的な構造だ。世界の謎を追うというテーマが背骨として機能しており、探索・戦闘・官能が三つ巴で旋回しながら物語を推進していく設計になっている。単なる抜きゲーと侮ることなかれ、これは「弱本格ぐらいのRPG」と作者自身が形容するとおり、RPGとしての骨格をきちんと持った作品なのである。

キャラクター造形の巧みさも本作の強みだ。妹のメアは「ただただかわいい」と説明されているが、その素朴な一言に込められた設計意図は深い。過度に属性を盛らず、等身大の親しみやすさを前面に出すことで、プレイヤーとの感情的な距離を縮めることに成功している。一方で淫魔のリリリは、旅の発端となる導き手でありながら、けっして物語の添え物に留まらない存在感を持つ。百年以上の眠りから覚めたデイの持つ謎めいた雰囲気、幼馴染のルーシィが備える「常識を逸した筋力」というギャップ——こうした個性の配置が、旅のアンサンブルを豊かに彩る。

サブキャラクターの扱いにも目が行く。盗賊のセビナやシスターのアビーは出番こそ限られるが、物語の地平に奥行きを与える役割を果たしている。特筆すべきは敵サイドの造形だ。マリステラとレミという二人組は、単なる障害として配置されるのではなく、互いの関係性が透けて見えるキャラクター設計になっており、対立構造に人間味を持ち込んでいる。善悪の区分が単純でないことが、本作の物語密度を一段上げている。

成人向けコンテンツの傾向も本作の個性を語るうえで外せない。「男性受け」と「和姦」のどちらかという設計方針は、受け手の嗜好を明確に意識したものだ。竿役を主人公に統一するという方針の一貫性は、プレイヤーの没入感を担保するための配慮であり、作り手の誠実さが見える。基本CG22枚、シーン数約70という数字は、この規模の同人RPGとしては標準以上の充実度と言っていい。妹・淫魔・幼馴染・盗賊・シスターと、バラエティに富んだ組み合わせがそれぞれに異なるテンションで描かれており、単調さとは無縁だ。

システム面の設計にも良識が光る。現在の目的を表示するUIの実装は、「今何をすべきか」という迷いを取り除き、プレイヤーを物語に集中させる効果がある。難易度が四段階で選択できる仕様は、ライトユーザーからやり込みを求めるプレイヤーまで広く受け入れる間口の広さを生み出している。プレイ時間が6時間から20時間と幅広いのも、この難易度設計の直接的な結果だ。回想部屋の実装も含め、「遊びやすさ」への意識が隅々に行き届いている。

スマートフォン版という形態について触れると、これはPC版から移植された本作が新たなプレイヤー層に届く経路となっている点で意義深い。電車の中で、寝床で、好きな時に好きな場所でこの旅に出られるという体験は、PCの前に座ることを前提としたゲームとは異なる消費のリズムを生む。それがDLsiteにおける686本という販売数の一部を支えているはずだ。

クレイジー二厘というサークルが本作で示したのは、官能と冒険を対等の軸として扱う作家性である。どちらかに過剰に傾かず、それぞれを必要な重さで物語に組み込む手腕は、同人RPGというジャンルへの深い理解から来ているだろう。4.66という高評価は、その誠実さへの応答と読むのが自然ではないか。本誌としては、ファンタジーRPGの旅情と大人の寓話が交差するこの一作を、今期の収穫として堂々と推薦したい。

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