今回編集部が取り上げるのは、サークル「しるおち」が手がけるスマートフォン向け短編RPG『あの子、壊れてからずっと臭い』である。販売数は2,313本、評価は81件から4.48点という数字が示すとおり、決して声高に宣伝されてきたタイトルではないにもかかわらず、一定の支持層を着実に獲得し続けている。本誌がこの作品に注目したのは、その数字の背景にある「作品としての一貫性」と「フェティッシュの純度」ゆえである。
本作の核心を一言で言い表すなら、「テーマの徹底」だ。精液・匂い・そして壊れた少女という三要素を軸に据え、ゲームプレイ全体がその世界観を崩さぬよう設計されている。山賊に囚われたヒロインが繰り返しの凌辱によって精神的に変容していく過程を、ドット絵アニメーションという手法で描く。ピクセルアートという表現様式は、過剰なリアリティを遮断しながらも情景の輪郭をきっちりと伝える。これは意図的な選択であり、本作においては「ドット絵だからこそ成立する距離感」が、テーマの過激さと受け手の没入をうまく調停している。
プレイ時間は10〜15分と極めて短い。一本道の構成でOPからEDまで流れるように体験できる設計は、短編映画や読み切り漫画のような完結性をゲームに与えている。多くのエロRPGが「探索」や「育成」といった要素を付加することで体験を引き延ばすのに対し、本作はその一切を削ぎ落とし、物語の核だけを残した。この潔さは、ジャンルへの真摯な向き合いとも読めるし、ターゲットを極めて明確に絞った戦略的判断とも読める。いずれにせよ、結果として生まれたのは「余白のない密度」を持つ作品である。
収録されたドットHアニメーションは全7シーン。輪姦・フェラ・パイズリ等、ジャンルの定番をひと通り押さえながら、それぞれのシーンがテーマである「匂い」「汚れ」「変容」と有機的に結びついている点は特筆に値する。ただ行為を羅列するのではなく、ヒロインの台詞回しが各シーンの文脈を補完し、快楽堕ちというテーマを感情の流れとして体験させようとする意図が見える。「もっと臭くしてぇ…」という一文が象徴するように、台詞の質が作品の完成度を大きく左右していることを、本作は証明している。
また、最初から全Hシーンが回想部屋で解放済みという仕様も、編集部的には評価したい設計思想だ。「プレイヤーに見たいものを見せる」という明快な意志表示であり、遊び手への誠実さの表れでもある。コンテンツを隠してプレイ時間を人工的に引き延ばすことに腐心する作品が多い中で、このスタンスは清々しいとすら感じる。スマートフォン対応という点でも、隙間時間に完結できるボリューム設計と合わさって、利便性は高い。
ドット絵×匂いフェチという組み合わせは、同人ゲームの中でも特定の需要に精密に照準を合わせたニッチな領域だ。しかしだからこそ、その需要に応えたときの満足度は高い。4.48という評価点は、広く浅くではなく、刺さる層に深く刺さった証左だろう。
本作を語るうえで欠かせないのが、スマホ版という形態の意義だ。PCゲームとして生まれた作品をスマートフォン向けに最適化することは、単なる移植以上の意味を持つ。操作体系の違い、画面サイズ、プレイ環境の多様性——これらを乗り越えて同等の体験を提供することは、相応の開発コストを要する。しるおちがそれを選択した背景には、より広いプレイヤー層へのアプローチという意思が読み取れる。
短くて、濃くて、ブレない。それが本作『あの子、壊れてからずっと臭い』の本質であり、2,000本超という販売実績が静かに語る説得力の正体である。同人ゲームというフィールドで尖った個性を持つ作品を探しているならば、この15分間はひとつの答えになりうる。本誌が今後もしるおちの動向を追い続ける理由は、まさにその純度の高さにある。
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