今回編集部が取り上げるのは、サークル「つっきーのお茶会」が手がけたスマートフォン向けリョナ脱出ゲーム、「アリスと悪魔の牢獄」である。販売数1,028本、評価4.56点という数字は、決してメジャーとは言えないニッチな嗜好分野においてこれほどの支持を集めたことを示しており、本誌がその内容を丁寧に解剖する価値は十分にある。
本作の骨格をひと言で表すなら、「美少女が閉じ込められた空間で知恵と身体を削りながら脱出を目指す」というシンプルかつ残酷な構図だ。主人公はアリスという名の女性であり、彼女が囚われる牢獄は文字どおり悪魔の領域である。脱出ゲームというジャンルは本来、謎解きとアイテム探索を軸とした知的遊戯だが、本作はそこに流血・猟奇・触手・百合といった濃密な要素を絡ませることで、パズルを解く行為そのものに緊張と羞恥と恐怖の三重奏を纏わせることに成功している。
特筆すべきはスマートフォンという媒体の選択だ。同人エロゲームにおいてPC版が主流であり続けるなかで、つっきーのお茶会はあえてスマホ版として本作を世に出した。タッチ操作による直感的なインタラクションは、画面を指でなぞるという行為そのものに妙なリアリティを生み、プレイヤーがアリスの置かれた状況をより近しく感じ取る仕掛けとなっている。脱出ゲームのUI設計とリョナ表現の融合という点で、本作はスマホ同人ゲームとして一つの実験的成果を示していると言えよう。
ジャンルの構成を見ると、「女主人公」「百合」「異種えっち」「触手」「屈辱」「血液/流血」「猟奇」「リョナ」という8つのタグが並ぶ。これは単なる羅列ではなく、本作の設計思想を如実に反映したものだ。リョナというジャンル自体がそもそも破壊・苦痛・屈辱を主軸とする嗜好であり、そこに百合という女性同士の情愛的要素が加わることで、暴力と耽美が奇妙に共存した独自の世界観が生まれている。悪魔の牢獄という舞台設定は、こうした要素を無理なく包摂する器として機能しており、製作者の設定センスの巧さを感じさせる。
触手や異種えっちの描写においては、デジタルゲームならではの演出が随所に活かされているようだ。静止画と文章だけで構成される作品が多い同人ゲーム界隈において、脱出ゲームというインタラクティブな形式を採ることで、プレイヤーは受動的な鑑賞者ではなく能動的な当事者として物語に引き込まれる。アリスが次の局面を切り開くたびに、その先に待ち受ける展開への期待と不安が交錯する──この感情の揺れこそが、本作の中毒性の根幹を成していると本誌は分析する。
評価9件で平均4.56点という数字も興味深い。件数こそ多くはないが、その平均値の高さはプレイした者の満足度が軒並み高水準であったことを示唆している。販売数1,028本という実績は、リョナというジャンルのファン層において口コミによる支持が着実に積み上がった証拠でもある。スマホという手軽な入り口が新規層を取り込み、作品の質がリピーター的な高評価に繋がるという好循環が生まれていると見ていい。
本作が示すのは、脱出ゲームという枠組みの可能性であり、同時にスマートフォン同人ゲームという新興フィールドの奥行きでもある。今月の注目作として本誌がこの一本を選んだ理由はそこにある。暗く閉じた牢獄の中でアリスが何を見て、何を失い、それでも脱出を諦めないとしたら何がそうさせるのか──その問いへの答えを指先一本で探り続けるという体験は、このジャンルを愛するプレイヤーにとって、ひとつの完成されたゲームとの邂逅と呼ぶにふさわしい。
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