今回編集部が取り上げるのは、山羊野メェ吉による同人マンガ「全員欲求不満な勇者御一行 女剣士レベッカ編」だ。評価4.82点(11件)、販売数136本という数字が示すように、ファンタジーエロマンガというジャンルにおいて着実に支持を集めている一作である。
本作の最大の特徴は、古典的なRPG世界観を舞台に据えながら、登場人物それぞれの「欲求不満」という内面的な動機を物語の中核に置いている点だ。「大冒険時代」と銘打たれた世界で魔王討伐を目指すというベタな設定を逆手に取り、勇者タカヒコとシスターのソフィアが魔王を倒すより日々の情事を優先しているという滑稽さを前提として提示する構成は、書き手の物語的なセンスを感じさせる。ギャップコメディとして成立させる土台があるからこそ、後半の展開が映えるのだ。
本誌が特に注目したいのは、ヒロインであるレベッカの造形である。気高く、強く、弱者を嫌う孤高の女剣士という外面と、岩陰でひとり乳首オナニーに耽る変態マゾという内面のギャップは、キャラクター性の二重構造として丁寧に設計されている。単なる「強気なキャラが堕ちる」という類型に収まらず、彼女が秘密を持ちながら日々を過ごしているという孤独感がわずかながら滲み出ており、読者がそこに感情移入できる余地が生まれている。これがキャラクター単体の魅力として機能し、作品全体の評価を底上げしている要因であろう。
勇者タカヒコというキャラクターもまた、興味深い設計がなされている。父親の功績によって勇者と認定されたにすぎず、剣も魔法も使えないニート気質の男という設定は、一見するとただのギャグキャラに見える。しかし「強い者への劣等感を持ちながらも、女性を欲望する衝動だけは本物」という歪な存在として読むと、レベッカとの対比がより鮮明になる。強さを誇示する彼女が、もっとも弱々しく見える男に覗かれ、関係を持つことになるという構図は、意図的かどうかはさておき、倒錯的な快楽の文法として機能している。
127ページというフルカラーの物量もまた、本誌が評価したいポイントの一つだ。同人マンガにおいてこのページ数を全編フルカラーで仕上げることは、制作コストとして決して小さくない。にもかかわらず、作中の色彩設計は安定しており、ファンタジー世界の雰囲気を保ちつつ、各キャラクターの肌の質感や衣装の着衣感を丁寧に描写している。「着衣」がジャンルとして明記されている通り、服を着たまま展開するシーンへの意識は高く、脱がないことで生まれる拘束感や羞恥の演出が随所に活かされている点は見逃せない。
編集部の目から見れば、本作はジャンル的な記号の羅列——アヘ顔、オホ声、パイズリ、フェラチオ、中出し——をただ消費させるだけの作品に終わっていない。それらの要素が、レベッカというキャラクターの「隠された本性」が暴かれ、解放されていく過程の中に組み込まれているからこそ、読後感に一定の満足感が残る。属性の羅列が物語の文脈によって意味を持つ、その設計力こそが4.82という高評価の源泉であると本誌は見ている。
欲求不満を抱えたまま旅を続けるパーティという概念は、続きを想起させる開かれた構造でもある。山羊野メェ吉という書き手が同一世界観の中でどのような広がりを見せるか、編集部としては今後の展開を静かに注視していきたい一作だ。
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