今回編集部が取り上げるのは、ドライドリームが送り出したスマホ向けRPG「テンプテーションコロシアム」である。販売数1,208本、評価4.53点(95件)という数字は、このジャンルにおいて決して偶然の産物ではない。色仕掛けと逆レイプを軸に据えたバッドエンド専用RPGという尖った設計が、確かなユーザー支持を勝ち取った一作だ。
本作の舞台となるのは、魔法と建築の国・マジティア王国が開催するコロシアム大会である。隣国クリミナから参加した新米魔法使いのマルスが、腕試しと賞金を目当てにトーナメントへと挑む——という導入は、いわゆる王道RPGの文法に沿っている。しかし本誌が注目するのは、その表層的な英雄譚の裏に張り巡らされた「誘惑と敗北」の構造だ。大会には建前の裏に隠された別の意図があり、セリーナ姫の失踪、謎のお姉さんの暗躍、そして精霊たちの真の目的が、8日間のトーナメントを通じて少しずつ明かされていく。シナリオの骨格はしっかりと設計されており、単なるエロゲームとしての消費に留まらない読み応えを持たせている点は評価に値する。
戦闘システムについても語らなければならない。ターン制バトルそのものはツクールRPGの標準的なそれだが、本作が独自に導入した「バトルイラスト」システムが戦闘体験に大きく差別化をもたらしている。戦闘中に一枚絵が大きくスクリーンへ展開し、敵がダメージを受けるとイラストが変化するというインタラクティブな演出は、プレイヤーの没入感を格段に引き上げる。敵キャラクターが途中で言葉を発するシステムも、戦闘の緊張感とエロティックな雰囲気を同時に醸成しており、ゲームプレイと官能描写を切り分けずに一体化させようという作り手の意志が感じられる。
キャラクター設計の豊かさも本作の大きな魅力である。火・水・雷・土・風という5属性の精霊はいずれも女性の姿を持ち、マルスが強くなればなるほど手強い精霊と対峙する仕組みだ。土と風の精霊に出会った者がほとんどいないという世界設定は、進行に応じた達成感をさりげなく担保している。精霊たちは人間を好むがゆえに奴隷にしようとするという逆説的な愛情表現は、本作全体を貫くテーマ——欲望による支配と被支配——の象徴的な形として機能している。
主人公マルスのキャラクター造形も興味深い。優秀な魔法使いでありながら「欲望には少し負けやすく、強く出られると押されてしまう性格」という設定は、逆レイプや色仕掛けをメインギミックとする本作においてプレイヤーの感情移入を促す巧みな仕掛けだ。強さと弱さを併せ持つ主人公像が、各キャラクターとのやり取りに説得力を与えている。謎のお姉さんが夢と現実の双方でマルスに迫ってくるという構造は、現実と非現実の境界を曖昧にしながらプレイヤーを物語へと引き込む演出として機能しており、ストーリーの核心へ向けた伏線として効いている。
CGボリュームについても本誌は注目した。立ち絵CG26キャラ・基本枚数50枚、イベントCG基本62枚(差分含め97枚)、合計基本枚数112枚(差分含め147枚)というスケールは、ドライドリーム史上最大ボリュームと称されるだけの充実度だ。街を散策すると色仕掛けでお金を奪われたり、ステータスを強制的に下げられるイベントが発生する設計も、探索の緊張感と意外性を生み出しており、ダンジョン攻略とコロシアム戦を軸とした本線ルートとは異なる楽しみ方を提供している。
スマホ版という形態についても触れておきたい。PC版を原作とした本作がスマホプラットフォームへと移植されたことで、通勤・通学の隙間時間や就寝前のベッドの中といった、据え置き環境とは異なるシチュエーションでのプレイが可能になった。8日間というゲーム内時間軸の明確さは、プレイセッションを区切りやすくするテンポの良さとも重なり、スマホ向けゲームとしての親和性を高めている。
評価4.53点というスコアは、95件という相応の母数から導き出された数値であり、一過性の話題性ではなく繰り返し遊ばれ、評価され続けた結果と見るべきだ。バッドエンドのみという潔い割り切りが、かえって作品のコンセプトを純化させ、特定の嗜好を持つプレイヤーたちの強い支持を集めている。ドライドリームが本作で示したのは、エロティックなゲームにおいても世界観・キャラクター・システムの三位一体が揃ったとき、確かな評価が生まれるという事実である。本誌はこの一作を、ジャンルの可能性を真剣に押し広げた意欲作として記録しておきたい。
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