今回編集部が取り上げるのは、黒薔薇ぷろでゅーすが手がけた脱出ゲーム「世界はガキュバスに支配されました2」のスマホ版である。579本の販売数に加え、33件のレビューから算出された評価スコア4.55点という数字は、同人ゲーム市場においてけっして軽視できない指標だ。数字が物語るのは、単なる話題作ではなく、遊んだ者が確かな満足感を抱いて評価を残した、手応えのある一本であるということである。
本作が属するジャンルを整理すると、「脱出ゲーム」「サキュバス/淫魔」「女性優位」「男性受け」という組み合わせが浮かぶ。アダルト要素と謎解きゲームプレイを融合させた作品は市場に一定数存在するが、本作の特徴はその設計の丁寧さにある。「ガキュバス」と呼ばれる淫魔たちに支配された世界を舞台に、主人公アルトが収容施設からの脱走を試みるというプロットは、脱出ゲームというジャンルの本質——閉じ込められた状況からの突破——とエロティックなシチュエーションとを極めて自然に結びつけている。設定に無理がなく、世界観とゲームルールが一体化しているのだ。
登場するガキュバスは全6体。セーラ、メル、リオ、プリエ、マイ、ミーシャという個性豊かな面々が用意されており、それぞれが固有の「領域」を持つ構成になっている。学校風の空間、水に囲まれた幻想的な領域、ダンスステージ、牢獄のような信者の部屋、お屋敷、そして施設の外と、6エリアがそれぞれ異なる意匠とパズル設計を持っていることは特筆に値する。同じ解法の使い回しに頼るのではなく、各キャラクターの個性に合わせたパズルが組まれている点に、制作側の誠実な作り込みを感じる。
パズルの中身を少し見てみると、メルの領域では「かいりき」というひでんわざを用いて石を動かすという仕掛けがあり、往年のRPGへのオマージュを感じさせる。リオの領域では、彼女の友人から情報を集め、好物を推理するという謎解きが用意されており、ただの物探しに終わらない会話劇の要素が組み込まれている。マイの領域では一度きりしか語られない言葉を記憶して行動するという記憶系のパズルが登場し、プレイヤーの集中力を試す。こうした多様性は、本誌がゲームプレイの質を評価する際に最も重視する要素のひとつである。一本のゲームの中で、これだけ異なる文法の謎解きが提供されているならば、ゲームとしての密度は十分に高いと言える。
エロティックなコンテンツ面においては、各キャラクターにつき2種類のHシーン、全12シーンに加えてイラスト差分が用意されており、全員にパイズリシーンが存在するという明快な構成になっている。「つるぺた」「巨乳/爆乳」という一見相反するジャンルタグが並んでいるのは、キャラクターごとの体型差を反映したものであり、6体の多様なキャラクター設計が視覚的な幅の広さにも寄与していることが読み取れる。搾精を中心に据えた女性優位のシチュエーションが全編を貫くトーンとして機能しており、嗜好が明確な読者には刺さりやすい設計だ。
キャラクター造形についても触れておきたい。セーラは「人間世界の学校に憧れている」という設定が微妙なギャップを生み、メルは王子様妄想を抱く天然不思議系、リオはダンス好きの天然明るい系、プリエは独自の淫魔信仰を持つ宗教的な異質さ、マイは「一見優しそう」というミスリードを含む含みのある造形、そしてミーシャは施設外の不良ポジションとして単純に良い人でも敵でもない立ち位置を与えられている。6体それぞれが紋切り型に収まらず、読み解きがいのある設定を持っている点は、シナリオ設計の水準が低くないことを示している。
スマホ版という形態について本誌は特に注目している。PC向けに生まれたゲームデザインをモバイル環境に移植することは、UIや操作感において一定の課題を伴う作業だが、この作品に対して高評価が維持されているという事実は、移植品質が及第点を超えていることを間接的に示している。脱出ゲームというジャンルは、タッチ操作との親和性が本来高い。画面を直接触れながら謎を解くというインタラクションは、マウスクリックよりも直感的に没入感をもたらす側面がある。スマホという媒体が本作のゲームプレイ体験を損なうどころか、場合によっては強化しうるというのは、本誌が興味深く見ているポイントだ。
市場全体を見渡したとき、脱出ゲームとアダルト要素の組み合わせにおいて、ゲームプレイのクオリティを犠牲にせずに成立させた作品は意外に少ない。どちらか一方が形式的な添え物に終わりがちな中、黒薔薇ぷろでゅーすは6体分の個別パズル設計、12シーンのHコンテンツ、そして一貫した世界観設定という三つの柱をバランス良く立てることに成功している。今月の注目作として本誌がこの一本を選んだのは、数字の後ろに積み重なった設計の誠実さを評価したからに他ならない。4点台後半という評価スコアは、単なる期待値の低い界隈での高評価ではなく、プレイした者が正当に認めた結果として受け取るべきだろう。ゲームとして遊ぶ価値のある一本である。
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