今回編集部が取り上げるのは、サークル・黒電車が送り出したスマートフォン向けエロRPG「忘却のイグドラシル」である。DLsiteにおける販売数は2,565本を記録し、120件の評価から算出されたスコアは4.59点という高水準。同ジャンルの競合作品がひしめく市場において、これだけの数字を積み上げているという事実が、本作の完成度を雄弁に語っている。
本作の軸となる物語は、記憶を失った少女メイと、両腕を持たない魔導士が「神の塔」の頂上を目指すという旅路だ。設定だけ聞けばシリアスな冒険譚のようにも映るが、実際には巨乳・爆乳、羞恥・恥辱、言葉責めといったジャンルタグが示す通り、エロスを中核に据えた作品である。それでいてキャラクター造形は丁寧で、「ドスケベボディと天然のメス豚気質」というやや刺激的な言葉で表現されるメイのキャラクター性は、プレイヤーの没入を支える確かな個性として機能している。キャラクターに対する作り手の愛着が伝わってくる点は、本誌が同人ゲームを評価する際に最も重視する要素のひとつだ。
戦闘システムもまた、本作の評価を押し上げた重要な要因である。シンボルエンカウントとアクティブタイムバトルを組み合わせた設計は、スマートフォンという操作環境においても快適なテンポを実現している。特筆すべきは、戦闘中に使用する回復薬が一定確率で「副作用」を引き起こし、発情状態のモンスターによるドットエロシーンへと移行する仕組みだ。このギミックはただの演出に留まらず、シーン後にモンスターの武器を入手できるという明確な戦略的メリットが付随している。つまり「エロシーンを見る」という行為がゲームプレイとシームレスに結びついており、エロとゲームが乖離しがちな同ジャンルの課題に対して、黒電車は一つの解答を示している。
武器システムの奥行きも見逃せない。剣・短剣・メイス・斧・双剣・杖という6系統の武器それぞれにスキルが付与される設計で、その組み合わせは数万通りに上るという。中には「称号」と呼ばれる特定スキルが約束された武器も存在し、ビルド構築の楽しみを深めている。加えてスタイルと呼ばれる7種類の職業・コスチューム選択システムがあり、レベルアップ時のステータスボーナスや得意武器装備時の攻撃力補正など、ゲームとしての骨格はしっかりと設計されている。この「ちゃんと遊べるRPG」としての手触りが、薬物・回しといった刺激的なジャンルタグと共存しているところに、本作の稀有なバランス感覚がある。
エロコンテンツの物量もまた本誌が注目するポイントだ。差分を含めたエロCGは約700枚という規模で、スタイルごとのシーンや夜の拠点でサポートキャラ視点からヒロインを覗き見る「夜行動」システムなど、バリエーションの豊富さは申し分ない。全シーンにボイスが収録されており、声優・緑野らいむの演技がヒロインに確かな体温を与えている。ドットエロについてもヒロインの装備コスチュームが全て反映される仕様となっており、スタイル変更のモチベーションとエロ演出が連動して機能するよう設計されている。この細部へのこだわりこそ、高評価の根拠となっているはずだ。
スマートフォンというプラットフォームで、本格的なRPGシステムとエロコンテンツの双方を高い水準で実現した本作は、黒電車というサークルの技術力と作家性を示す一本である。評価4.59点という数字は、購入者たちが「期待を裏切られなかった」ことの証左に他ならない。エロRPGという枠組みの中で、ゲームとしての完成度にも真摯に向き合った姿勢は、この市場を追い続ける編集部の目にも鮮明に映る。本作をひとつの到達点として参照しつつ、黒電車の次なる挑戦を静かに待ちたいと思う。
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