今回編集部が取り上げるのは、スタジオ名瀬が手がけたスマートフォン向け探索型RPG「プリメラの好奇心」Android版だ。
同人ゲーム市場において、スマートフォン対応タイトルはまだ数が限られている。PCゲームの移植や専用設計を問わず、タッチ操作への最適化が不十分なまま世に出てしまう作品も少なくない現状の中で、本作は507本という販売数と評価4.4点(75件)という安定した数字を誇っている。これはモバイル同人ゲームとしては十分に評価に値する結果であり、本誌が注目した理由のひとつでもある。
本作の最大の特徴は、戦闘システムを完全に排除した設計にある。RPGという形式を採りながら、プレイヤーが向き合うのは戦闘ではなく「イベントの探索と発見」だ。小規模に設計されたマップを散策しながら、昼パートと夜パートの切り替えによって状況が変化し、それぞれの時間帯に固有のイベントが解放されていく。この構造は、シナリオやキャラクターへの没入を戦闘という断絶なく継続させるという点で、非常に理にかなった判断である。アダルトコンテンツを主軸に置く作品において「テンポ」は命綱に近い要素だが、本作はその点を正確に理解した上で設計されている。
物語の舞台となるのは、冒険者たちが立ち寄る静かな街。主人公はその街の教会に暮らす少女プリメラである。ある日、弱った精霊と出会い無理やり契約を結ばされた彼女は、人の欲求が満たされることで発生するという「魔力」を集めるという使命を背負うことになる。これはいわゆる「理由付け」の構造であるが、単なる口実に終わらせず、街の住人それぞれとの関係性を通じてプリメラという人物像を立体的に描こうとする意図が感じられる。性格的な「好奇心旺盛さ」という設定が、各イベントへの自然な流れを作り出しており、キャラクターの行動に一定の一貫性をもたらしているのは評価できる。
イベントの総数は45以上。酒場でのアルバイトを軸にした連続イベント群、教会での男の子たちとの絡み、街角で知り合う売春婦との交流を経て自らもその道へと踏み込んでいく展開、ギルドハウスの娼館における複数イベント、そしてスライムや浮浪者といったファンタジー色の強い要素まで、バリエーションは広い。ジャンルタグにある「すやすやえっち」や「複数プレイ・乱交」「回し」といった要素も網羅されており、購入前にジャンル確認を徹底する読者にとっては非常に誠実な作品構成と言えるだろう。
特筆すべきは回想ルームの実装だ。45以上のイベントCGを後から自由に閲覧できるこの機能は、一周プレイで取りこぼしたシーンを埋めるためだけでなく、気に入ったシーンへの再アクセスを容易にするという意味でも重要である。ボリュームが増えるほど回想機能の有無はプレイ体験の質を大きく左右するが、本作はそこを丁寧に押さえている。
昼と夜というゲームサイクルは単純に見えて奥深い。同じ場所でも時間帯によってまったく異なる人物・状況が待ち受けており、プレイヤーは「今どこへ行くか」という選択を繰り返すことになる。これが探索への動機を維持し続ける仕掛けとして機能しており、ループ感を感じさせないままイベントを消化していける。スマートフォンというプラットフォームの特性上、短時間でのプレイセッションが想定される中、このサクサクとした進行設計は正しい選択だ。
セクハラ紳士イベントや、近づきすぎると危険なガラの悪い冒険者の存在など、街の雰囲気づくりにも手が抜かれていない。こうした「選択肢によって展開が変わる危うさ」はファンタジー探索RPGとしての緊張感を維持しており、ただシーンを消化するだけのゲームとの差別化に一役買っている。
スタジオ名瀬という作り手が、戦闘なき探索型というジャンルにおいて確かな設計力を持っていることは、本作が示す数字と内容の密度が証明している。同人ゲームというフィールドで、プレイヤーの時間を尊重しながらも内容の充実を両立させた一作として、本誌は本作を強く推薦する。Android対応の探索型アダルトRPGを探しているなら、この作品を手に取る価値は十分にある。
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