今回編集部が取り上げるのは、サークル「瀧音MELO」が手がけたスマートフォン向け作品『魔王と守護騎士』だ。502本という販売数を誇り、83件の評価から算出された4.61点という高得点は、同ジャンルの中でも際立った存在感を示している。
本作の最大の魅力は、その設定の逆転劇にある。かつて世界に君臨した魔王が復活を果たすも、目覚めてみれば人間の女性の肉体に宿ってしまっていた、というアイロニーに満ちた導入から物語は幕を開ける。失われた力を取り戻すためには、己を封じ込めた守護騎士たちを倒すほかない。このシチュエーション——圧倒的な存在であるはずの魔王が、弱体化した状態で強敵に挑まねばならないという構図——が、「下克上」「屈辱」というジャンルタグに見事に結実している。ただ強者が弱者を踏みにじるのではなく、かつての強者が今は弱者の立場に置かれている、という関係性の転倒が本作のドラマ性を支える根幹だ。
ゲームシステムとしては、戦闘を排した「イベント回収型RPG」という設計が採用されている。戦闘のないRPGというと物足りなさを想像するかもしれないが、本作においてはこれが独自の緊張感を生み出している。プレイヤーの選択と行動の積み重ねによって「獲得した魔力の量」と「プライドの減少量」が変動し、それが勝敗と分岐イベントの発生条件を左右するという仕組みだ。数値による管理が明確であるため、プレイヤーは自らの選択がどのような意味を持つかを意識しながら進めることができる。戦闘というわかりやすい勝負の場を取り除いた代わりに、選択と数値の蓄積という形で葛藤を可視化した設計は、スマートフォンという媒体との親和性も高い。
CGについても注目すべき点が多い。基本CG20枚という数は、小規模サークルの作品としては堅実な水準であると言えるが、内訳に目を向けると主人公に13枚が割り当てられており、物語の主軸である主人公の変化と羞恥の過程が丁寧に描かれていることが窺える。対する守護騎士たちにはそれぞれ1枚ずつのCGが用意され、個性の立ったキャラクター像を作り出している。加えて立ち絵には脱衣差分が実装されており、静止した一枚絵の域を超えた視覚的な変化を楽しめる設計だ。選択イベントと敗北イベントを軸に据えたCG構成は、プレイヤーが主体的に物語に関わるという本作のシステム観とも一致している。
スマートフォン向けという点も、本誌として見逃せない要素だ。PC向けが主流を占める同人ゲーム市場において、Androidネイティブで展開される本作は、電車の中や就寝前のちょっとした時間でも手軽にプレイできるという利便性を備えている。イベント回収型というシステム自体も、セッションを細切れにしやすいモバイルプレイのスタイルとよく合っている。じっくりと腰を据えてプレイするだけが同人ゲームの楽しみ方ではない、という点において、本作は新たな選択肢を提示している。
「脚」「筋肉」というタグも見逃せない。巨乳・爆乳というわかりやすい視覚的要素に加え、鍛え抜かれた肉体描写という要素が本作のビジュアルに独特の質感を与えている。守護騎士という職業設定上、敵キャラクターたちは屈強な肉体を持つ存在であり、そこに人間の女性体を持つ魔王が挑むという構図が、ジャンルタグの組み合わせを単なるカタログ以上の物語的文脈に昇華している。
4.61点という評価は、単に絵柄やエロティシズムの水準が高いというだけでは達成しえない数字だ。世界観の整合性、ゲームとしての手触り、そしてシチュエーションとシステムの融合——これらすべてが噛み合ってこそ、83名のプレイヤーが高評価を与えた理由が説明できる。瀧音MELOというサークルが本作において示したのは、エロティックな要素をゲームデザインの論理と切り離さず、一本の作品として結びつける誠実な姿勢であった。本誌がこの作品を今月の注目作として推薦するのは、その一点にほかならない。スマートフォンという新たな舞台で同人ゲームの可能性を広げた本作は、同ジャンルを愛好するプレイヤーの手元に確かな手応えを届けてくれるはずだ。
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