今回編集部が取り上げるのは、サークル・Playmeowが送り出したAndroid向け作品『ドゥームズデイ・ロボットガール』である。832本の販売数と、61件の評価から導き出された4.28点という高い平均スコアが、この作品の完成度を静かに物語っている。
本作の舞台は、戦争が終わった後の荒廃した世界だ。文明が崩れ、人間の最も醜い部分が剥き出しになった終末的な環境の中で、主人公は「エマ」と名乗る不思議な少女と出会う。彼女は軍用ロボットを自称し、感情の起伏に乏しく、常識的な振る舞いとは程遠い言動を繰り返す。それでいて、主人公に「一緒に来てほしい」と告げ、自分の持てるものをすべて差し出すと言う。この奇妙な申し出から物語は動き出す。
注目すべきは、このゲームが「終末」と「日常」という相反する要素を巧みに共存させている点だ。世界が壊れていく中でも、エマとのチャット、身体的な交流、ほんのりとした同棲生活が日々の中心に置かれる。プレイヤーは毎日の始まりに探索先を選び、エマとの関係を積み上げていく育成シミュレーション的な構造を持つ。この「破滅が背景にあるのに、今日も彼女とやり取りしている」という感覚のギャップが、本作固有の緊張感を生み出している。終わりが近いとわかっていながら、それでも目の前の彼女に目を向けてしまう——そうした矛盾した人間の心理を、ゲームデザインそのものが体現しているのだ。
キャラクター造形という観点でも、エマという存在は秀逸である。無表情、常識の欠如、性的な言動への無頓着さ——こうした要素は往々にして記号的なキャラクター消費に終わりがちだが、本作はそこで止まらない。エマの瞳の奥に潜む悲しみが少しずつ明かされていくにつれ、彼女が何を経験し、何を背負っているのかという謎が物語の核心へと引っ張っていく。無表情というジャンルタグは、単なる属性の説明ではなく、本作における重要な物語装置として機能しているわけだ。
ボリューム面の充実も見逃せない。基本CGは23枚、差分を含めれば250枚以上に及び、さらにCG動画4組を収録している。テキスト総量は100,000字に達し、スマートフォン向け作品としてはかなりの読み応えがある。エマの好感度や選択肢の積み重ねによって分岐する5種類のエンディングは、周回プレイへの動機を十分に与えてくれるだろう。主人公女性キャラクターに加え、副主人公格の女性キャラクターも登場し、物語に厚みを加えている。グロテスクや暴力的描写も含まれるとのことで、終末世界の過酷さは装飾ではなくきちんと描写されていると見てよい。
また、本作が12言語に対応している点は、サークルの作品に対する真剣さの表れとして評価したい。日本語・英語をはじめ、繁体字・簡体字・韓国語・タイ語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語・トルコ語とテキストが翻訳されており、音声は日本語で統一されている。同人ゲームでこれほどの多言語対応を実現しているケースはそう多くなく、グローバルなプレイヤー層を意識した姿勢が伝わってくる。
本誌がこの作品を今号の特集候補として選んだ理由は、スマートフォンという手軽なプラットフォームでありながら、テキスト量・CG枚数・エンディング分岐・世界観の作り込みという四拍子が揃っているからに他ならない。ロボット/アンドロイド、純愛、ミリタリー、ほのぼのという一見相容れないジャンルタグが一本の作品の中で矛盾なく機能しているのは、シナリオとゲームデザインが有機的に結びついているからこそだ。
荒廃した世界で孤独な魂と出会い、その内側に秘められた痛みを少しずつ解きほぐしていく——ありふれた設定に聞こえるかもしれないが、Playmeowはその手つきを丁寧に、かつ確かな筆致で描いた。終末の絶望と、隣にいる誰かへのかすかな希望。その両方を胸に持つプレイヤーに、この作品はきっと長く残るだろう。
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