今回編集部が取り上げるのは、サークル「のうむ」が手がけるスマホ向け成人向けアドベンチャーゲーム『自分以外NPCの世界で旅する話』である。販売数4,495本、評価4.44点(279件)という数字は、同ジャンルの作品群の中でも際立った支持を示しており、本誌が注目するには十分すぎる理由がある。
この作品の核心は、タイトルそのものに凝縮されている。「自分以外がNPCの世界」という設定は、ゲームプレイヤーなら誰しも一度は想像したことのある夢想的な前提であり、それをそのまま物語の骨格に据えたサークルの着眼点は鋭い。主人公は戦士でも勇者でもなく、いわゆる「モブ」として異世界に溶け込んでいく。強さや成長で世界を切り拓くのではなく、ただそこに存在し、NPCたちと交わっていく——この設計思想が本作の最大の個性だ。
育成要素も戦闘システムも一切存在しない、と開発者は明言している。これは一見すると制約のように映るが、むしろ逆説的な強みとして機能している。プレイヤーはステータスを気にすることなく、フィールドを自由に歩き回り、各キャラクターとの接触に集中できる。レベル上げの義務から解放された探索体験は、本作が目指す「旅する」という感覚と見事に一致している。ゲームとしての純度を高める選択肢として、この割り切りは評価されるべきだろう。
登場するNPCの多彩さも特筆に値する。道案内の町娘から女海賊、宿屋の女将、女騎士、スライム娘、踊り子、雪女——これだけの職業・属性・ファンタジー要素が一作に詰め込まれていながら、世界観の統一感が崩れていないのは、サークルの設計力の高さを示している。各キャラクターはそれぞれ独自のイベント条件を持っており、単純に話しかけるだけでは起動しないケースも存在する。この「探索の余地」が、プレイヤーに能動的な関与を促す仕掛けになっている。進行に詰まった際のヒントがゲームフォルダ内に用意されているというのも、ユーザー体験への配慮が行き届いている証左である。
Hイベント数39、総CG数279枚という数値は、スマホゲームとしては相当な密度だ。一般的なスマホ向け同人成人ゲームがCG枚数を絞る傾向にある中で、279枚という総量はPC版に近い充実度を誇る。ジャンルとして中出し・パイズリ・モブおじさんが明示されているように、本作はファンタジーの衣を纏いながらも、描写の方向性においては徹底した直接性を貫いている。この潔さが、279件もの評価を集めた要因の一つであろう。
スマホという媒体の選択もまた、戦略的な意味を持つ。PC版とは異なる操作感覚の中でどれだけ没入感を維持できるかが、スマホ移植版の常なる課題であるが、本作はタップ操作によるシンプルなナラティブ進行を採用することで、プラットフォームの特性に正直な設計を実現している。電車の中でも、自室のベッドでも、この「異世界の旅」に足を踏み入れられるという体験価値は、スマホならではの没入形態といえる。
本作に流れる静かな逸脱感——それは「俺TUEEEな冒険譚」でも「ハーレムファンタジー」でもなく、ただの一個人が異世界の片隅に紛れ込み、出会った者たちと密やかに交わっていくという、奇妙にリアルな旅の記録である。4,495本という販売実績と4点台半ばの高評価は、その静かな逸脱を多くのプレイヤーが正しく受け取った証に他ならない。ジャンルの枠組みを超えて、一つの完結した世界として成立している点において、本作はサークル「のうむ」の誠実な作家性が結晶した一作であると断言できる。
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