今回編集部が取り上げるのは、ALLDICEが手がけたスマートフォン向け作品「侵蝕のヒプノシスAfterstory」である。販売数1,241本、評価スコア4.75点(81件)という数字が、この作品の完成度をそのまま物語っている。同人ゲームの世界では、評価件数が増えるほどスコアが平均に引き寄せられる傾向があるが、それでも4.75という高水準を81件もの評価で維持しているという事実は、一過性の話題作ではなく、繰り返し手に取られ、語られる作品であることの証左だ。
本誌がこの作品に注目したのは、単にジャンルの組み合わせが巧みだからではない。「サスペンス」と「トランス/暗示」という二軸が物語の骨格を形成し、そこに「羞恥/恥辱」や「屈辱」といった心理的深度を持つ要素が重なることで、単純な官能描写に留まらないドラマ性が生まれている点だ。ヒプノシス——催眠・暗示——をテーマの中心に据えた作品は同人の世界でも一定数存在するが、それを「侵蝕」というワードと組み合わせることで、ALLDICEはこの作品に独特の不穏さと緊張感を与えることに成功している。
「Afterstory」という副題が示す通り、この作品はある物語の「その後」を描いている。続きを語る構造を持つ作品には常にリスクが伴う——前作を知らない読者を置き去りにするか、あるいは既存ファンだけに向けた閉じたサービスになるか、という二択だ。しかしALLDICEはそのジレンマを巧みに処理しており、初めて触れるプレイヤーにも物語の輪郭を把握させる導入の設計が光る。これは構成力のある作り手にしかできない仕事だと、編集部は評価している。
スマートフォン向けに最適化されているという点も見逃せない。PCが中心だった同人ゲーム市場においてAndroidネイティブの作品を開発することは、タッチ操作の設計、画面サイズへの対応、処理負荷の管理など、追加のコストを伴う。にもかかわらずALLDICEがこの形式を選んだのは、生活の中の隙間時間にサスペンスフルな没入体験を届けたいという明確な意図があったからではないだろうか。「青姦」や「命令/無理矢理」といったシチュエーションが示す開放的・非日常的な空間設定も、そのコンセプトと呼応している。
「複数プレイ/乱交」と「中出し」が組み合わさるクライマックスの構造は、催眠・暗示というテーマが持つ「意志の侵食」という本質的な問いと接続されている。プレイヤーが目撃するのは単なる性的な場面の羅列ではなく、ひとりの人間の意識が少しずつ塗り替えられていくプロセスであり、そこに生じる葛藤と屈服の物語だ。81件の評価者のうちの多くが高評価を与えているのは、この「物語としての説得力」を感じ取ったからではないかと本誌は推察する。
ALLDICEという作り手について触れておくと、このサークルは作品の完成度と誠実な設計で一定の信頼を積み上げてきた存在だ。今月の注目作として取り上げるに値するのは、単にセールスが好調だからではなく、同人ゲームというフィールドで「語れる作品」を生み出し続けているからである。サスペンスと暗示をスマートフォンという日常的なデバイスで体験させるという試みは、ジャンルの可能性を一歩押し広げた仕事として、この先も参照されるべき一本となるだろう。
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