今回編集部が取り上げるのは、ぽみみ子宅による「逃げてどっぴゅん☆くノ一のいたずら忍法!」のスマホ版である。販売数1,012本、評価3.9点(42件)という数字が示すとおり、一定の支持を獲得しているこの作品、その内実に迫ってみると、単なるエロゲームの枠に収まらない独特の設計思想が浮かび上がってくる。
本作の骨格を成すのは「逆転無し」というジャンルタグだ。この一言が持つ意味は、同人ゲームの文脈では非常に重い。プレイヤーがどう足掻いても主人公は逃げ続けるしかなく、追い詰められていく一方の展開が約束されている。脱出や反撃が叶わないというゲーム構造は、プレイヤーに独特の緊張感と高揚感を同時にもたらす設計であり、この種の作品においては世界観への没入度を左右する最重要の要素と言っていい。編集部がこの作品に注目したのも、まずはこの設計の潔さにある。
ドット絵を採用している点も見逃せない。昨今の同人ゲーム市場においてドット表現はひとつのこだわりの証であり、手間のかかるアニメーションやキャラクター描写を丁寧に積み上げた作品ほど、プレイヤーからの信頼を勝ち取る傾向がある。本作においても、くノ一キャラクターのドット描写が世界観の根幹を担っており、忍者という和風テイストとドットグラフィックの相性の良さがひとつの美点として機能している。スマホという小さな画面においてドット絵が持つ視認性の高さも、このフォーマット選択の合理性を裏付けていると言えるだろう。
おねショタ・逆レ・男性受けというジャンルの組み合わせは、本作のターゲット層を明確に示している。女性側が主導権を握り、年上・あるいは強者の立場にあるくノ一が少年を翻弄するという構図は、このジャンルの定番でありながら、それを「逆転無し」のゲームメカニクスと組み合わせることで、シナリオとゲームプレイの一体感を生み出している。いたずら忍法というタイトルのサブテキストが示すとおり、いたずらの主体は常にくノ一側であり、プレイヤーはその術中に嵌まり続けるという構造が、エロティックな体験とゲーム体験を不可分に結びつけているわけだ。
巨乳・爆乳というビジュアル方向性も、この作品の魅力の一軸である。ドット絵という表現媒体において、誇張されたボディラインをいかに魅力的に見せるかはサークルの技量が問われるところだが、ぽみみ子宅はそのバランスを丁寧に処理しており、ドット絵ならではの抽象化と色気の両立が成されている点は評価できる。42件という評価件数に対して3.9点という数字は、プレイした読者の多くが一定の満足を覚えた証拠であり、大きな失望を与える作品ではないという安定感の表れでもある。
スマホというプラットフォームの選択は、このジャンルの作品においてはまだ希少である。PCがメインの同人ゲーム市場において、スマホ対応を丁寧に行うことはそれだけで差別化の武器になる。手軽に起動できる環境は、この種のゲームの「ちょっと遊ぶ」というプレイスタイルと相性が良く、移動中や隙間時間に楽しめるという利便性がある種のユーザー層に刺さったことが、1,000本超えという販売数に貢献しているのではないかと本誌は見ている。
くノ一というモチーフは、エロゲームの世界において長い歴史を持つ。和服・色気・武術という組み合わせはキャラクターとしての完成度が高く、忍術という設定がゲームプレイの演出にも幅を持たせる。いたずら忍法という言葉の軽妙さは、シリアスに偏りすぎず、かといってギャグに堕しない絶妙な温度感を作品全体に与えており、そのバランス感覚こそがぽみみ子宅というサークルの個性を形成していると言えるだろう。逃げては捕まり、また逃げるという反復の中に生まれるリズム感と官能性——この作品が一定の評価を得ているのは、その繰り返しに中毒性があるからに他ならない。今月の注目作として本誌が推す理由は、そこにある。
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