今月の注目作として本誌が強く推薦したい一作が、しなちくかすてぃーらによる野心的な寝取られRPG『夏色のコワレモノ』だ。田舎の夏休みという、どこか懐かしく温かみのある舞台設定の裏側で、プレイヤーが知らぬ間に進行していく喪失劇――この逆説的な構造こそが、本作最大の魅力と言えるだろう。女子バスケ部のエースであり幼馴染の榎本涼香(えのもと りょうか)を巡る物語は、表向きは青春の輝きを装いながら、その実、静かに崩れてゆく関係性を鋭敏に描き出してみせる。両親の都合で都会に引っ越すことになった主人公が、最後の夏休みを彼女の家で過ごすというシンプルな設定が、実は巧みに練られた舞台装置として機能している。評価4.7、レビュー数24,561件という圧倒的な数字が既に示すように、本作はこのジャンルを代表する傑作として確固たる地位を占めている点も、推薦の根拠として申し添えておきたい。
本作の真骨頂は、何といっても「自動発生型の寝取られイベント」というシステム設計にある。プレイヤーが涼香との夏休みを楽しんでいる傍らで、彼女の周囲に蠢く様々な男たちの影が徐々に濃くなっていく。スケベ中年、浮浪者、いじめられっ子、エロガキ、モテない童貞男、不良――多彩なキャラクターそれぞれが独自のアプローチで涼香に近づくさまが、巧みなイベント設計によって細やかに描かれる。知らぬ間に変化していく彼女の様子を察知したとき、プレイヤーの胸に生まれる複雑な感情は筆舌に尽くしがたい。「様々な男がねっとりと彼女を狙う」という言葉通りの密度が、ゲームの序盤から終盤に至るまで一貫して維持されており、プレイを通じて緊張の糸が途切れることがない。このシチュエーション特化という潔い設計が、作品全体に揺るぎない個性をもたらしている。
察知システムの三本柱も特筆に値する。深層心理メータはヒロインの心の揺れをリアルタイムに可視化し、スマホ通話では声音の微妙な変化が伝わってくる。SNSでのクラス男子の裏チャット、彼女の手帳のカレンダーといった複数の情報源が織り成す断片を拾い集めながら、プレイヤーはじわじわと真実に近づいていく構造は、一種の推理小説的な緊張感を生み出している。この「知ってしまう恐怖」をゲームシステムとして精緻に表現した手法は、同ジャンルの中でも群を抜いた完成度を誇り、多くのプレイヤーから高い評価を受けている所以でもある。情報の非対称性をゲームデザインに組み込むというアプローチは、知的なプレイヤーほどより深く作品を楽しめるという豊かな体験設計だ。
RPGツクールMVで丁寧に作り込まれた本作は、v1.04という完成度の高いバージョンで提供されており、体験版でのセーブデータ引き継ぎには対応していないが動作確認は推奨されている。Ci-enでの攻略情報公開という継続的なサポート姿勢も、制作者のこの作品への思い入れを感じさせる。シチュエーション特化型の寝取られRPGとして、バスケ部エースという魅力的なヒロイン造形も含めて、本誌はこの夏の必携タイトルとして全力で推薦する。静かに崩れていく夏の記憶と涼香の変化が醸し出す余韻は、プレイ後もしばらく心に染み付いて離れないことだろう。寝取られジャンルの愛好者から入門者まで、幅広い読者に届けたい珠玉の一作として、今月号最推薦の栄誉を贈りたい。
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